早期治療
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245図10-19 a~f:さまざまな移転歯。〔図中番号:2=側切歯、3=犬歯、4=小臼歯〕犬歯の異所萌出上顎犬歯は、第三大臼歯を除けば最後に萌出するため最も異所萌出となりやすく、かつ萌出路も蛇行している。異所萌出は埋伏や隣接歯の歯根吸収、転位、含歯性嚢胞の形成などの複雑な問題を引き起こす。したがって、早期介入のためには、10歳以前に唇側と口蓋の粘膜の視診と触診に加え、臨床診査やエックス線写真による診査で評価することが重要である。長期的なパノラマエックス線写真によるモニタリング、歯列交換期の注意深いスペーススーパービジョンや適切な介入によって、合併症の発症を予防することができる(詳細は本章と3章犬歯埋伏の項を参照)。図10-18は、異所萌出により上顎右側中切歯の歯根が吸収し、その後脱落した13歳女子の症例である。移転歯移転歯は隣接した2本の歯が入れ替わる萌出障害で、歯根の位置まで入れ替わることもある。発生はまれだが、臨床的な対応が難しいの発育上の異常である。移転歯とその位置によって隣接歯の歯根が損傷を受け、萌出が遅延する可能性がある。1849年に最初に移転歯を定義したHarris50は、「位置の逸脱」と表現した。移転歯は完全型 complete transpositionと不完全型incomplete transposition に分類される(図10-19)。完全型は歯冠と歯根全体が逆転する。不完全型は歯冠のみが逆転し、根尖は本来の場所に位置する。また移転歯には、側切歯の矮小歯、先天性欠如、叢生、晩期残存乳歯、歯根の湾曲、隣在歯の捻転などの異常をともなうことがある。なお、きわめてまれに1歯が片顎から正中線を超えて反対側に及ぶ転位が起こるが、ShapiraとKuftinec51はこの異常は異所萌出であり、移転歯と考えるべきではないと報告している。発現率移転歯は上下顎で起こるが、比較的上顎で認められやすい。通常片側性で、両側性はほぼない。他の歯の異常とも関連があり、発現率は男性より女性が高い。上顎のうち移転歯を最も多く認めるのは犬歯で、次いで小臼歯、側切歯である。下顎では側切歯で最もよくみられる。また上下顎同時にあるいは乳歯列で報告されたことはない。移転歯には犬歯が絡むことがほとんどである。ShapiraとKuftinec51は、犬歯とその他の移転歯の比が12:1であると報告した。またHuberら52は、上顎での発現率は患者300人に1人であると報告した。Elyら53は、85本の移転歯のパノラマエックス線写真と臨床記録を用いて、被験者75名(男子27名、女子48434322334343abcdef移転歯

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