PRD 2015月10月
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39Volume 23, Number 5, 2015質の処方のうちのおよそ1/3が不必要かつ不適切であることを主要な懸念事項としている4-7. 長年,歯科感染症や歯周疾患,インプラント治療における抗生物質の処方について精査されている1.そして医科および歯科における抗生物質の過剰処方や誤用が,抗生物質抵抗性の助長,アレルギー,効果減弱および抗菌剤使用による二次感染をもたらすことが警告されている1, 3, 8.医師や歯科医師がこの警告を受け止めて賛同しているか,彼らが学んだことを実行しているかについて疑問がある.メイヨークリニックでは,この問題は臨床家にとって非常に重要であると考え,抗生物質の使用を減らすために15編の論文を発表した9. 前述した歯科医師によるさまざまな歯周治療やインプラント治療における抗生物質の処方や見解について,無作為に選択した歯周病専門医が歯周疾患を治療する時にどのように行っているか,電子メールを用いて調査した.方法および材料(Method and materials) 本調査と研究は,ニューヨーク大学倫理委員会の認可のもとに行った.本調査は,10項目の臨床領域(図1)に伴う54の質問から構成されており,SurveyMonkeyを利用して電子メールで送信した. 1名の歯周病専門医ではない統計専門家が,無作為に米国歯周病学会の名簿を基に50州からそれぞれ少なくとも1名以上,3州からは4名の歯周病専門医,合計102名を選択し,それぞれの歯科医師に54の質問を電子メールで送信した.各質問は処方習慣を明確にするために多岐選択肢で構成されていた. この無作為に選択された歯科医師は,各州の規模を参考に,重みを付けて分析した.統計学的分析は潜在的人口(サンプルの重みを考慮して)を基に要約統計を用いて評価した. また筆者は臨床家にとって価値があると考え,10項目の臨床領域に対する抗生物質の処方に関連する文献の評価を調査結果に加えた.結果(Results) 102名の回答者は全員,メール受信後4~6週以内に回答を返信した. 回答者の歯周病専門医は主に20年以上の臨床経験者であり(58.8%),12.7%は0~10年の経験であった.本研究に参加した歯周病専門医のうち83.3%は男性,16.7%は女性であり,平均年齢は55.76歳(34~81歳)であった.回答者の特定の臨床領域における抗生物質使用に関する結果を以下に示す. 臨床領域1:歯周膿瘍の治療(Clinical circumstance 1: Treating a periodontal abscess) 「今までに歯周膿瘍の治療経験はありますか?」の問いには回答者の100%が「はい」と回答した.「何回程度抗生物質を処方しましたか」と質問したところ,以下のような回答が得られた:「常に行う(65.3%)」「時々行う(28.7%)」「めったに行わない(6.9%)」「行わない(1.0%)」.膿瘍の治療にもっとも使用された抗生物質はペニシリン系であった(87.0%).7~10日間の抗生物質投与は90.9%で,回答者の多くは7日間投与していた(58.6%).抗生物質の投与を行う回答者のうち,66.7%はデブライドメント後に投与し,2%はデブライドメントを行わなかった. 長い間,歯周膿瘍の治療について研究論文ではコンセンサスが得られておらず,議論の的となっている10, 11. 概要を述べると,全身的な問題が認められる歯周膿瘍の患者で抗生物質を用いた治療は,合理的な方法であると言われている.臨床領域2:慢性歯周炎の非外科的療法(Clinical circumstance 2: Nonsurgical treatment of chronic periodontitis) 回答者の97%が非外科的療法を行ったと回答した.このグループのうち抗生物質の使用に関しての回答は「常に使う(5.9%)」「時々行う(37.6%)」「めったに行わない(44.6%)」「行わない(11.9%)」であった.抗生物質を使用すると回答した者はペニシリン系(20.7%)もしくはドキシサイクリン(29.3%)を使用していた.抗生物質の投与期間は7日間が31.97%で,10日間が31.9%,10日間以上が21.23%であった. 研究やシステマティックレビューを1.歯周膿瘍の治療2.慢性歯周炎の非外科的治療3.歯周骨外科4.歯周組織再生療法5.上顎洞底挙上術6.顎堤増大術7.骨再生誘導法(GBR法)8.抜歯即時埋入インプラント9.治癒した顎堤へのインプラント埋入10.軟組織移植術図1 抗生物質の使用に関して調査した10項目の臨床領域.

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