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19Volume 24, Number 1, 2016咬合:現状における概説と提言Michael J. Racich, DMD1Original Title:Occlusion: A Contem-porary Overview and Recommendations要約(Abstract) 咬合の概念は,基本的に試行錯誤によって時代とともに発展してきた.その多くは観察によって培われてきており,さらに最近では,目で見える成功した咬合のいくつかは科学的に検証されてきた.本論文の目的は,ある咬合哲学ないし何らかの理論により歯科医師が継続的な成功を達するための共通点を,科学的根拠に基づいた方法で調べて要約することである.関連する文献を収拾するためにMedlineとCochrane共同計画が使用された.(Int J Periodontics Restorative Dent 2015;35:775-782. doi: 10.11607/prd.2544)1Private Practice, West Vancouver, BC, Canada.Correspondence to: Dr Michael J Racich, 1085 Palmerston Ave, West Vancouver, BC, Canada V7S 2J4. Email: mike@drracich.ca 咬合は補綴学用語集に『上顎または下顎の歯または人工歯において,切断もしくは咬合する面の間にある静的関係』と定義されている1.数十年前,専門家(たとえば,McCollum, Mann, Pan-key, Schuyler, Stallard, Stuart)は,最適な咬合体系のための歯科ガイドラインを示した2.これらのほとんどは,長年にわたり認められており,さらに観察により成功した咬合のいくつかは科学的に検証されてきた3.その他の咬合様式や概念も提案されている4.咬合の考え方は,いくつかの重要で基本的な共通点を共有するが,現実には歯が接触しなければ,何が患者の歯列において問題となる可能性があるのだろうか? はたしてひとつの咬合の考え方が他よりもすぐれているのだろうか? GibbsとLundeenは上顎と下顎の生理学的な歯の接触はむしろ例外であることを示した5.歯は咀嚼時(ほんのわずかな時間で,食物塊を貫通した場合のみ)や嚥下時に接触する.これらの歯の接触現象は,ほとんどの接触が多少の変動はあるが似た状態であり,一日数千回,合計で多くても10~15分発生すると考えられる.したがって,咬合と咬合治療(特に保存修復学や補綴学に関連するようなもの)の成功は,皮肉にも,患者が起きていて,歯を離している状態で最適化された結果であり,すべての咬合に関しては,多くの場合において議論の余地がある.歯科医師がどの理論を信じ,また選択したとしても,日中に歯が接触していないことは,咬合の成功に関するエビデンスの重要な部分である.一方で,睡眠時における上下顎間の歯の接触が過剰になりうるブラキシズムやクレンチングといった睡眠障害は,歯の摩耗や補

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