PRD No.1
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35Volume 24, Number 1, 2016頬側歯肉弁を歯冠側へ延長する新しい手法Marco Ronda, MD, DDS1Claudio Stacchi, DDS, MSc2Original Title:A Novel Approach for the Coronal Advance-ment of the Buccal Flap要約(Abstract) 適切な歯肉弁の減張は,歯肉の増大部を緊張なく縫合する場合に必要不可欠である.治癒期間中に細菌から移植材を保護するために,生物学的な封鎖を確実に維持することは必要不可欠である.特に下顎臼歯部においては,適切な位置に頬側歯肉弁を安定させることを目的とした従来の骨膜切開では,必ずしも十分ではないことがある.本研究では,下顎臼歯部に垂直的な歯槽堤増大術を行う際に,安全かつ予知性が高い,頬側歯肉弁を歯冠側へ移動させる術式を用いた76症例について報告する.(Int J Periodontics Restorative Dent 2015;35:795-801. doi: 10.11607/prd.2232)1Private Practice, Genova, Italy.2Adjunct Professor in Oral Implantology, Department of Medical, Surgical and Health Sciences, University of Trieste, Trieste, Italy.Correspondence to: Dr Marco Ronda, piazza Brignole 3/8, 16122 Genova, Italy. Fax: +39 010 583435. Email: mronda@panet.it. 下顎臼歯部の垂直的な骨の喪失は,インプラント治療に際して,解剖学的な要因やテクニカルな難しさよりも,外科処置が非常に困難となる.ショートインプラント1やブロック骨移植2,インターポジショナルグラフト3や下歯槽神経移動術4,仮骨延長法5,メンブレン6, 7やチタンメッシュ8を用いた歯槽堤増大術など,さまざまな治療方法が検討されるが,適切な軟組織のマネジメントは,いかなる再生治療の術式においてもきわめて重要である.汚染や感染を予防し,安定した移植後の治癒と同化を可能にするためには,完全で安定した歯肉弁の閉鎖が必要である.歯槽堤増大部における抵抗のない被覆は,頬側あるいは舌側の歯肉弁を効果的に減張できれば遂行することができ,またそれは,緊張のない縫合によって安定する.再生外科処置の結果を満足のいくものとするための軟組織のマネジメントに関しては,さまざまな臨床プロトコールによる研究報告がある9-21.数多くの術式の中でも,縦方向の骨膜減張切開(以下PRI)は,歯肉弁の安定化において基本的な役割を有しているが,この術式についての明確な論述や分析は数少ない22. 筆者らは,本ケースシリーズにおいて,頬側歯肉弁を減張し,歯冠側へ増大した歯肉弁を移動させ,安定して被覆し,その過程中に歯肉弁の確実な閉鎖を維持するための新たな術式について報告する.

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