QDI 3月
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Quintessence DENTAL Implantology─282118第1回インプラント手術で重大事故を起こさないための手術環境づくりとチームワーク下尾嘉昭(MALO CLINIC TOKYO)インプラント手術の重大事故を起こさないためにキーワード:手術チームワーク、手術室、器械出しアシスタント、外回りアシスタントはじめに 最近、インプラント治療の普及にともない、手術室を新たに設置する歯科医院が増加しており、筆者も設計などの相談を受けることが多い。しかし、その多くは手術室として機能するにはさまざまな面で不十分であり、また重大事故に対応可能な環境とは言い難い。そこで、今回は一般歯科医院における適切な手術環境について説明をしてみたい。また、手術チームワークに関しては、特に器械出しアシスタントと外回りアシスタントの役割について解説する。手術環境づくり1)手術室 筆者らのクリニックでは、執刀医、助手2名、麻酔医1名、器械出しアシスタント1名、外回りアシスタント1名の計6名で構成されたチームで手術を行っている(図1)。まず手術室の大きさであるが、手術に携わるスタッフ全員が余裕を持って動けるだけの広さが要求される。なぜなら、緊急事態発生時(コードブルー*)は、より多くの人数で対応することが最悪な結果を避ける大きな要因となるからである。 また、器具の収納スペースも必要で、緊急時に器材や薬剤を他の部屋へ取りに行くことは、緊急対応の遅れを生じさせる(図2)。 次に手術室内の配置で重要なことは、手術台が部屋の中央にあるのではなく、術野である顔面がなるべく中央に位置するようにして、その周りに術者・麻酔医・器材などのスペースを確保することである(図1)。術野周囲に器材スペースの余裕がないと、手術道具が整理できず、物品の落下や不潔域との接触などさまざまな問題が生じる。また、清潔域の周囲に外回りのアシスタントが動けるスペースが必要である。外回りとは、読んで字のごと 近年、歯科インプラントの予知性向上とともに、インプラント治療を行う歯科医院は増加傾向にある。しかし、本来インプラント治療は外科手術であるにもかかわらず、外科医としてのトレーニングを受けていない医療者が治療に当たっていることも多く見られ、手術時の偶発症への対応不足や医療事故発生の危険性が懸念される。そこで本連載では、一般歯科医師が習得すべき重大医療事故を起こさないための知識を、以下の3回に分けてそれぞれ解説する。第1回 インプラント手術で重大事故を起こさないための手術環境づくりとチームワーク第2回 インプラント手術における正しい患者管理第3回 インプラント手術における重大偶発症時の救急対処法*救命救急部における「緊急事態発生」を意味する用語であるが、もう一つ「至急全員集合」という意味も含まれる。

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