QDI 1月
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131補綴のサインで見抜く重篤合併症インプラント外科器具マスタープログラム─Vol.20,No.1,2013131はじめに 機能開始後のインプラント(上部構造)は口腔機能の回復という大目標に対して、機能・形態的および患者主観(快適さ、審美性、口腔内の感覚など)的評価が複雑に関連する。また、発生する問題事象のなかには前装部のわずかなチッピング、初期インプラント粘膜炎・周囲炎のように患者の自覚症状がないものも少なくない。これらは定期検査において発見されることが稀ではなく、早期の対応が重要であることは言うまでもない。 そこで、第1回目の本稿では、比較的頻繁に見受けられる問題事象を、①生物学的な問題、②材料・補綴学的な問題、③審美的な問題、④心理的な問題に分類し、まずはそれぞれを簡単にまとめてみたい。第1回インプラント機能開始後に見られる合併症(問題事象)の概要萩原芳幸(日本大学歯学部特殊診療部歯科インプラント科・科長)補綴学的なサインで見抜くインプラントの重篤合併症キーワード: 合併症、インプラント、補綴学的合併症、問題事象 一般的に発生頻度の高い補綴学的(材料学的)合併症は、生体がわれわれ歯科医師に「何かを伝えようとしている」、あるいは「何かに気が付いてほしい」というサインと捉えるべきである。インプラント治療の安定した長期的予後が重要視されるなか、可及的に重篤な合併症あるいは不可逆的な生物学的合併症へ移行させないことが求められている。われわれはこの「何か」を見逃さず、正しく判断して適切な予防処置を講じることが、初期補綴学的合併症から重篤な合併症への負の連鎖を止めることになる。 補綴学的なインプラント(上部構造を含む)の問題事象は多岐にわたり、すべてが重篤な合併症に関連するわけではない。しかし、日常臨床において補綴装置に生じる小さな「サイン」を見逃さず、つねにインプラントの安定性に関連づける習慣を持つことは、各自の治療成績の向上、ひいてはインプラント治療への信頼性の向上にも貢献する。 そこで本連載では、インプラントの重篤な合併症へのサインの見極め方、対処法を6回にわたって解説する。企画趣旨第1回�インプラント機能開始後に見られる合併症(問題事象)の概要第2回�固定性補綴装置に関連する合併症①:上部構造の緩みや脱離などに関する合併症第3回�固定性補綴装置に関連する合併症②:前装材料の破損・破折第4回�固定性補綴装置に関連する合併症③:アバットメント、フレームワーク、インプラント体の破損・破折第5回�可撤性補綴装置に関連する合併症第6回�力のコントロールに不可欠な咬合調整方法および総括

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