QDI 5月
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131補綴のサインで見抜く重篤合併症インプラント外科器具マスタープログラム─Vol.20,No.3,2013475おわりに 本稿では補綴学的合併症で発生頻度の高いセメント固定式の外冠(クラウン)脱離および前装材料のチッピング・破損について解説した。これらは日常臨床において高頻度で発生することが知られている。しかし、一般的に補綴装置(おもに外冠)のみに発生する合併症であるため、状況によって生物学的に大きな問題に波及するとの認識は低い。セメント固定式におけるクラウン脱離は、仮着セメントの溶解が主原因である。しかし、これには咬合の関与は無視できず、スクリューの緩みと同様に咬合エラーに対するセーフティー現象として捉えることもできる。また前装部のチッピング・破折も高頻度に発生する合併症として知られる。発生原因としては技工的な要因が複雑に関与するが、歯根膜を有さないインプラントに特異的な現象として捉えることができる。もちろん上部構造に対する機能圧が誘発因子になるために、咬合の管理(力の図16‐a、b コーピング表面からの剥離様破折①。臼歯部を補綴した際の前装用コンポジットには、界面剥離をともなう破折がしばしば観察される。この原因は、①不適切なコーピングデザイン、②金属表面の機械的結合機構の不備、③化学的表面処理の不備、④不十分な前装部の厚み、などが考えられる。この種の破損は図15に示すように機能時に発生する剪断力に左右されるため、最近では図11のように剪断力に拮抗するようなステップ状のサポート構造を付与する傾向がある。図15 レジン系前装材料の界面破壊の模式図(雪崩の原理)。コーピング表層から剥離するタイプの前装部破損(図16参照)は、雪崩の原理で説明できる。地面(図中滑り面)と積雪層との間に発生する剪断力が摩擦力を超えた場合に雪崩は発生する。同様に前装材料とコーピング表面の機械・化学的結合力が剪断力により破壊された場合に、剥離様の破損が発生する。図17 コーピング表面からの剥離様破折②。CAD/CAMで作製したチタン製フレームワークには、リテンションビーズによる機械的維持は付与できない。多くの場合、被着面にバーやディスクでノッチやアンダーカットを付与し、あとは化学的表面処理に頼らざるを得ない。図18‐a~e 前装用コンポジットの破損例。a:下顎第二小臼歯、第一大臼歯欠損に対して2本のインプラントを用いてフルベイクタイプのコンポジット前装冠(スクリュー固定式)を装着。歯冠高径が短く、咬合も緊密である。b、c:第一大臼歯頬側および遠心側のコンポジット前装部が広範囲の界面破壊をともない破損した。d、e:コーピングはCAD/CAMによるチタン製で、頬側軸面には維持のために設けたバーによる線状ノッチが認められる。近心咬頭頂および遠心辺縁隆線部はコーピングによるサポートが不足している。この症例における破損の原因は、①コーピングによる前装部の支持域が不足、②チタン‐コンポジット接着面の維持力(特に機械的)不足、③咬合接触状態、の3要因が考えられる。aabcedb破断滑り面積雪層

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