QDI 2015年9月
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骨造成を成功させるための填塞部外圧遮断法はじめに 故Per-Ingvar Brånemark教授はオッセオインテグレーションを阻害する要因の一つとしてマイクロムーブメントを挙げていた。インプラント埋入後、マイクロムーブメントが発生すると骨再生は阻害され、インプラントと骨との結合は失敗に終わる。もちろん、インプラントのオッセオインテグレーションだけではなく、マイクロムーブメントは骨造成時にも大きく関与すると考えられる1)。 通常、骨造成においてマイクロムーブメントを起こさせないために“外圧遮断”を行う。その方法には、ガードとなるためのチタン強化膜、チタンメッシュを粘膜内に設置する方法と2~4)、プロビジョナルレストレーション、シーネ、そして旧補綴物を粘膜外に設置する方法の2つが存在する(表1)。外圧遮断1)粘膜内遮断 粘膜内による方法は多く試行されて良好な結果が報告されているが、異物が粘膜内にあるため、血流の阻害などにより、粘膜裂開のリスクも否めない。粘膜裂開の報告として、Zitzmannら5)(1997年)が「非吸収性メンブレンでの骨造成時において44%の裂開が認められた」と、Mosesら6)(2005年)が「35%に裂開が認められ、骨再生が障害した」と報告している。2)粘膜外遮断 粘膜外の外圧阻害では、粘膜内の外圧阻害に対して血流の阻害や創部の保護などの利点を持つ。術式がシンプルなことなどを考慮すると、粘膜外の外圧遮断は有効な方法と言える。骨造成を成功させるための填塞部外圧遮断法水口稔之Toshiyuki Mizuguchiインプラント外科サポート1988年 日本大学松戸歯学部卒業1992年 水口歯科クリニック開業2001年 歯学博士取得2009年 水口インプラントセンター開設日本インプラント臨床研究会(Clinical Implant Soci-ety of Japan:CISJ)研修会委員会委員長・サイエンス委員、DentalXP エキスパートプレゼンター外圧遮断部位外圧遮断マテリアル形態保持咬合圧力血流阻害手術回数粘膜裂開感染リスク著者コメント高い高い低い低い低い高い高い低い低い低い2回2回1回1回1回多少あり多少あり多少あり多少あり多少ありありあり多少あり多少あり多少ありありありありありあり旧ブリッジ(症例3)シーネ(症例2)プロビジョナルレストレーション(症例1)チタンメッシュチタン強化膜粘膜内遮断粘膜外遮断周囲歯牙があれば十分安定した外圧遮断ができる。テクニック的エラーも起こりにくく、実践的である。比較的安定した外圧遮断ができるが、当部位では咀嚼しないことが重要である。もっとも形態保持性が高いが、手術に時間がかかり、術式が複雑で高度な技術を必要とする。形態保持性はあるが、血流の阻害や骨膜からの骨芽細胞の浸潤を阻害してしまう。旧補綴物を利用することで咬合力にも耐えられ、かつ安定した外圧遮断ができる。表1 骨造成時にマイクロムーブメントを起こさせないための外圧遮断方法77─Vol.22,No.5,2015745

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