QDI 2015年9月
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連載はじめに1 近年、インプラント治療におけるさまざまな併発症やトラブルが問題として指摘され、その原因に関する議論も活発になされるようになった。一方、そうしたトラブルの多くは、実際のところ、外科の基本手技を遵守しなかったために生じているとも推論される。 そこで本連載では、多くの術者が実は誤解をしている「正しい切開線の設定」について以下の6回に分けて各部位・欠損形態ごとに論じ、インプラント外科を失敗しないための切開のポイントを詳細に解説する。・第1回:前歯部1歯欠損症例(上顎/下顎)・第2回:臼歯部1歯欠損症例(上顎/下顎)・第3回:前歯部複数歯欠損症例(上顎/下顎)・第4回:上顎臼歯部複数歯欠損症例・第5回:下顎臼歯部複数歯欠損症例・第6回:無歯顎症例(上顎/下顎)切開の原則2 粘膜切開では骨膜も同時に切開するので、無歯顎には#15メスを、有歯顎には#15Cメス(#15より小さいので歯肉溝切開が行いやすい)を用いる(図1-a、b)。刃の先端ではなく、湾曲部を骨に当てるようにする必要があるため、決して#11は用いるべきではない(図1-c)。 切開の際は、原則的には粘膜・骨に直角で、メスの刃をつねに骨面に接触させた状態でメスを動かすべきである。ノコギリで木を切るように押したり引いたりする(sawing motion)先生が多いが、それでは切れる箇所と切れない箇所ができてしまい、剥離の際に粘膜が挫滅する危険性があるので推奨できない(図2-a)。 歯肉溝切開の際は、歯槽骨頂にメスを入れ、決して歯にメスを当ててはいけない(図2-b)。 インプラント埋入、二次手術に際しては、切開・剥離を行わないフラップレスサージェリーと、切開・剥離を行うフラップサージェリーの2つに大別される。以下、各切開線設定と、それを規定する因子について解説する。Dr. 堀内が基礎から解説!インプラント手術時の切開線設定と外科手技のポイント第1回前歯部1歯欠損症例における正しい切開線設定と外科手技堀内克啓奈良県開業:中谷歯科医院大阪大学歯学部臨床教授/長崎大学大学院顎口腔再生外科学講座非常勤講師/岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座非常勤講師図1-a おもに無歯顎症例に用いる#15メス。図1-c #11メス。切開では刃の湾曲部を骨に当てるようにする必要があるため、用いるべきではない。15無歯顎に使用図1-b おもに有歯顎症例に用いる#15Cメス。#15より小さいので歯肉溝切開が行いやすい。15C有歯顎に使用11粘膜切開には用いない126Quintessence DENTAL Implantology─794

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