QDI 2016年1月
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連載連載はじめに 上顎洞底挙上術を行う際には、Crestal approach、Lateral approachいずれにおいても、術前診断時にCT画像、パノラマX線写真、双方の画像を用いて診断する必要があります。なぜなら、上顎洞の解剖・生理を無視して上顎洞底挙上術を行うと、術中、術後にさまざまなトラブルが発生するからです。 本連載では、上顎洞底挙上術時に起こりうる各種トラブルと、それを予防するための臨床診断、起こった際の解決法について、私見を述べさせていただきます。上顎洞および上顎洞底挙上術のトラブルに関する内容は非常に多岐にわたりますので、今回は、特に多くの先生方が疑問に感じることの多いであろうテーマをピックアップし、Q&A形式で解説していくつもりです。 第1回目は、上顎洞のX線画像診断時に必ず留意すべきポイント、上顎洞内の異常所見の見極め方、耳鼻咽喉科に照会すべきか否かを見極める基準などについて、考えていきましょう。上顎洞を撮影したCT画像を用いて術前の診断する際、必ず確認しなければいけない点はどこでしょうか?Q1 一般的には、CT画像をとおして「上顎洞内に何らかの異常があるかどうか」を診なければなりません1、2)。これは歯科医師も、耳鼻咽喉科医も同じです。たとえば上顎洞の疾患にはさまざまな種類があり、嚢胞、腫瘍性、真菌症のものもあれば、単に上顎洞粘膜が肥厚していて、自然孔の閉鎖によって副鼻腔炎を起こしていることもあります。そうした状況を見極めるため、CT画像診断においてはまず、以下の3点を確認すべきです(図1)。①上顎洞全体の透過性(不透過像があるか)②自然孔が閉鎖しているか、開いているか③上顎洞粘膜の肥厚、嚢胞があるかどうか 上顎洞に不透過像があれば、当然ながら疾患の可能性を考えなければなりません。次に、自然孔が開いているかどうかを診ます。そして、より細かな分析、洞粘膜の肥厚や上顎洞内の嚢胞の有無の確認をします。そのようにして①→②→③の順番で診ていきます。CT画像上で自然孔が閉鎖していた場合は、歯科医師として次にどのような対応をすべきでしょうか?Q2 患者さんに問診をして「鼻閉感(鼻づまり)がありますか」と聞いてください。患者さんが「ありません」と答えて、なおかつ上顎洞内に異常所見が認められない場合は、上顎洞底挙上術を行ってもまず問題ないと言えるでしょう。 実際は、CT画像上で自然孔が塞がっているように見えても、鼻閉感を訴えない人もいます(図1の②)。たとえば、くしゃみをした時には生理的に開く患者さんでQ&Aで学ぶ サイナストラブル解決塾いざという時の臨床判断力を身に付けるために第1回術前編:上顎洞のX線画像のどこを見て何を判断するか小林文夫医学博士/医療法人社団 小林歯科医院日本口腔インプラント学会専門医/ICOI認定医/DGZI専門医76Quintessence DENTAL Implantology─ 0076

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