QDI 2016年1月
8/8

インプラントのためのインパクトの高い論文評価特別連載 インプラントのためのインパクトの高い論文評価1.国内外における即時荷重の評価1)海外における評価 1960年代に開始されたBrånemarkインプラントによる2回法2)は即時荷重に換わるスタンダードとしての提案と理解されるが、1970年代にはLedermannによるオトガイ孔間に埋入したインプラントを支台とした即時荷重オーバーデンチャーが報告されており3)、いち早い即時荷重への回帰がみられる。しかし、 1997年のSchnit-manらによる報告4)では即時荷重インプラントの残存率は84.7%とあまり芳しくない。 このように訴求性に乏しかった即時荷重は、近年のコンピュータやIT技術の急速な発展に後押しされて浸透が進んだ。X線CTの性能向上は顎骨の定量的かつ定性的情報を提供し、シミュレーションソフトで解析されたそれらの情報はインプラント埋入位置の確定に貢献し、さらに作成された手術用ガイドは埋入位置の再現や即時修復装置の製作に活用されている。また、当今のCAD/CAM技術の進展は、シミュレーションソフト上で設計された修復装置の製作を可能にした。 一方、即時荷重に不可欠な初期固定の定量方法として埋入トルク値やISQ値が測定され、情報が集積されている。これらの値を統一的に解釈するまでにはまだ至っていないが、即時荷重実施の基準として臨床で応用されている。 現在、即時荷重は荷重プロトコール内のレギュラーポジションを占めていると理解できる。2)国内における評価 本邦での荷重プロトコールは、おおむね欧米の見解をなぞったものである。 しかし、コーカソイドとモンゴロイドでは顎骨の形態や歯肉のバイオタイプに違いがあり、即時荷重の成功にはそれらへの考慮が不可欠とされる。具体的には、モンゴロイドの薄い頬側骨壁や粘膜は、審美症例への即時荷重を限定的にすると考えられている。また、歯列弓にTaperedタイプの多いコーカソイドと比べて、Squareタイプの多いモンゴロイドではいわゆるAP spreadが小さくなるため、無歯顎症例での設計に注意を払う必要がある。 第6回のテーマは、Immediate functional loading(以下、即時荷重)である。即時荷重は古くて新しい概念である。インプラントの歴史はワンピースインプラントから始まり、往時は即時荷重がスタンダードな荷重プロトコールだった。しかし、インプラントの成功にオッセオインテグレーションの成立が必須とわかり、埋入直後の荷重はリスクファクターと認識され、荷重前に3~6ヵ月の十分な治癒期間をおくことが次のスタンダードとなった。その後、閾値以下の微小動揺はオッセオインテグレーション獲得を阻害しないこと1)が理解され、即時荷重は再度日の目を見ることとなった。いったんは廃れた荷重様式が、科学の粧いを纏って蘇ったといえる。塩田 真(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科インプラント・口腔再生医学准教授)、一般社団法人 日本インプラント臨床研究会(CISJ:Clinical Implant Society of Japan)サイエンス委員会(岩野義弘、武田朋子、佐藤博俊、田中譲治、井汲憲治、水口稔之、若井広明、笹谷和伸、芦澤 仁)Immediate functional loadingのための重要キーワードベスト論文第6回Immediate functional loading検索キーワード1290129 ─Vol.23, No.1, 2016

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です