QDI 2016年3月
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Dr. Henry H. Takei が提唱する“ インプラント時代のピュア・ペリオ” というコンセプトDr. Henry H. Takei が提唱する“ インプラント時代のピュア・ペリオ” というコンセプト現代のインプラント治療においてなぜ歯周病の知識が不可欠なのか1──予知性のあるインプラント治療が行われている時代に、タケイ先生があえて「ピュア・ペリオ」(Pure Periodontics:純粋な歯周病学)をテーマに生涯研修コースを開催している理由をお聞かせください。 私はこのコースを実施する前に、タイトルと内容について熟考しました。私が歯周病学に携わってから45年が過ぎ、何年にもわたって歯周病学・歯科医学の経験を積む機会を得てきました。歯学部の学生として過ごした日々から歯周病専門医として臨床を続け、今日に至るまで長いキャリアを積むことで、この治療結果に対して再評価することができました。 1985 年にPer-Ingvar Brånemark博士からスウェーデンのイエテボリに招かれる機会に恵まれた際、草創期のインプラントを紹介されました。その当時のアメリカでは、オッセオインテグレーテッド・インプラントはまったく知られていませんでした。また私自身も、インプラントには興味を持っていませんでした。というのも、当時存在していたのは、骨膜下インプラントやブレードタイプインプラントだったからです。イエテボリでオッセオインテグレーテッド・インプラントの研究に参加させていただき、その特徴を理解するうちに、「この技術は、歯科医学を後戻りできないくらいに変えてしまうだろう」と直感しました。それはのちに現実となり、インプラント治療は非常に大きなパラダイムシフトを歯科医療にもたらすことになります。 私は歯周病学の専門教育を受けていたので、純粋な歯周治療から始まり、インプラントが歯周病学に組み入れられるまでの時系列的な変化を見る機会を、幸運にも得られました。インプラント治療は1987年以来、伝統的な歯周治療とともに行ってきた私の診療の一部になり、今日まで続いています。 診断を下したり治療計画を立てたりする際に、双方の治療は同等に重要ですが、予知性があるインプラント治療を自院の診療システムに導入したのちに、もし「正確な歯周病学に関する知識」が診断や治療計画、そして個々の治療に生かされなければ、保存できるかもしれない歯を「残すこと」よりも「抜くこと」に、より重点が置かれてしまう可能性があります。 「インプラント時代のピュア・ペリオ」という講座は、歯科医師がそうした偏りのある考え方を持つことなく、基本的な歯周治療と高度な歯周治療の両方をより深く理解するために役立つものとして開催しているのです。──歯を抜くか、残すかという決断を下す際には、長期予後を考えることが非常に大事だと思いますが、他にはどのような点に留意すべきでしょうか? まず、歯周組織に関する知識が、治療計画を立てる際に重要なのは言うまでもありません。とくに歯周病に罹患した歯は、全体的な治療計画がその歯の予後を左右するため、診査・診断においては細心の注意が必要です。その歯を抜歯するか、残すかの判断は、今日の歯科医療にとってもっとも重要な仕事の一つです。なぜなら、歯を残すための治療法は、抜歯後の治療法(欠損補綴治療)と同じくらい数多く存在するからです。抜歯するという診断が下されれば、インプラント治療は抜歯した部位を補綴する一つの有効な方法となります。固定性のブリッジや部分床義歯もまた、選択肢の一つです。すなわち、予後不良な歯、あるいは予後が不確かな歯が存在していて、その歯が将来的に失われるかもしれない場合であっても、われわれは歯を置換する方法を数多く知っているのです。それらの治療法を最終的に決定する要素は、個人的理由、または補綴学的、歯周学的、経済的判断に委ねられます。図1 1985年11月。Brånemark博士(左)、Dr. Henry H. Takei(右)とDr. Myron Nevins(中央)。130177 ─Vol.23, No.2, 2016

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