QDI 2016年3月
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今、話題の海外論文を正しく考察する【後編】集中連載Implant Review▼企画趣旨 インターネットの普及により、学術誌を電子ジャーナルとして容易に入手することができる昨今、われわれ日本の歯科医師も海外論文から多くの情報を得て日々の臨床に応用している。しかし、時にはこれらの論文が恣意的に解釈されて公に広まり、結果、ミスリードとして臨床に望ましくない影響を及ぼすことも散見されつつある。 そこで本企画では、影響力が大きく、さらにとかく本旨を誤解されがちな本の原著論文を取り上げ、その抄訳を記載し、客観的な解説を加えることで、その詳述を正確に共有できればと考える。■ 前編:インプラント周囲炎に対してどのような治療介入が効果的か? ―コクラン・システマティックレビュー ―■ 後編:スウェーデンにおけるインプラント喪失に関する多変量解析―コホート内症例対象研究―▼本論文が注目されている理由・スウェーデンにおけるインプラントの喪失を調査した国家的なコホート研究である。・歯周病の既往、喫煙の有無、インプラントの長さ(10mm以下の長さ)の他に、 使用するインプラントのブランド(種類)がインプラントの喪失に関連しているとの結論を提示した。今、話題の海外論文を正しく考察する【後編】スウェーデンにおけるインプラント喪失に関する多変量解析 ―コホート内症例対象研究―Derks J, Håkansson J, Wennström JL, Tomasi C, Larsson M, Berglundh T.Eectiveness of implant therapy analyzed in a Swedish population: early and late implant loss. J Dent Res 2015;94(3 Suppl):44S-51S. 佐藤琢也1、山田理人2、三木仁志3サトウ歯科・デンタルインプラントセンター大阪1、山田兄弟歯科2、はばら歯科3序文 これまでのインプラント治療の有効性はおもに専門医による小規模グループ内、もしくは大学病院におけるインプラントの生存率を用いた研究による評価がほとんどであった。しかし、これらは偏ったサンプルであるがゆえに、信頼性の高い方法により証明されたとは言えず、そのため大規模で無作為に抽出した患者サンプルによるインプラントの生存率の検討が必要とされていた。一方、スウェーデンではインプラント補綴を含む歯科治療に対して政府による助成金の支給が行われており、これらはスウェーデン社会保険庁(SSIA、 Försäkringskassan)によって管理・運営されている。とくに、2003年からは65歳以上の患者への助成金が増額されたため、結果、この世代のインプラント補綴の数は増加傾向にある。 そこで、本研究ではSSIAにて登録されたインプラント治療患者の大規模データを用いて無作為抽出を行い、インプラント補綴装置を装着した患者群における治療の有効性を評価することとした。方法 本研究は患者のカルテ情報の解析とインプラント補綴治療後9年経過の臨床評価よって行われた。1.上部構造装着前の喪失=early implant lossを評価 インプラント治療の既往のあるSSIAの患者データを基に、2003年にインプラント治療を受けた65〜74歳(23,000名以上)論文抄訳650229 ─Vol.23, No.2, 2016

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