QDI 2016年3月
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連載連載Quintessence DENTAL Implantology─ 0244はじめに 第2回で取り上げるテーマは、上顎洞底挙上術における術中のトラブルです。中でも今回は、術中の出血に焦点を当てます。 上顎洞底挙上術の術中の血管損傷による出血に関するリスクについて知っておくことは、臨床医にとって言うまでもなく不可欠ですが、これまであまり詳しく語られてこなかったテーマでもあります。今回は、術中に出血を起こした際の実践的な対処法と、その予防策について解説していきましょう。上顎洞底挙上術における血管損傷および出血に関して、まずは基本的な予防策を教えていただけますか?Q1 術中の出血は、静脈性出血と動脈性出血に分けられます。静脈性の出血は血がにじむ程度のものですが、動脈を損傷してしまうと拍動性の大量出血が生じ、止血がより困難になりますので、特に注意しなければなりません。 動脈損傷による出血を予防するには、やはり術前のCT画像で血管の走行位置を確認しておくことが何よりも大切です。上顎洞底部から血管までどのくらいの距離があるのかについては日ごろから確認されている先生方も多いと思うのですが(図1)、意外と見落とされがちなのが“骨と血管の位置関係”です(図2、3)1)。血管が完全に骨内を走行しているのか、あるいは骨から出て上顎洞粘膜側に存在しているのかを把握することで、適応症判断や術式選択(後述)、さらには出血時の止血方法が変わってきます。また、1本の同じ血管でも、場所によって血管が骨内にある部分と、骨から出ている部分が両方存在している場合もあるので、慎重な診断が必要です。術中に動脈性出血を起こした際に一般の臨床医でも可能な止血方法と、先生が用いている器具を教えていただけますか?Q2 ラテラルアプローチにおいてはいくつかの止血方法があり、私も血管を損傷した場合を想定して、日頃から複数の器具を準備しています。まずは代表的な2つの器具について説明しましょう。1)止血鉗子 止血鉗子は、図3-a、bのように骨内に血管が走行している部分に用いる器具です(図4-a、b)。図4-c、dのように、骨壁と骨内の血管を同時に圧縮し、いわば骨ごと血管を上下から潰して止血します。ラテラルアプローチの場合は、側壁骨の厚みは約1〜3mmですから、適切に用いれば綺麗に血が止まります。血管を断裂した場合は、2箇所の骨をそれぞれ潰して止めるようにします。大規模な処置に見えるかもしれませんが、一般の臨床医の方でも十分に使用可能です。Q&Aで学ぶ サイナストラブル解決塾いざという時の臨床判断力を身に付けるために第2回術中編①:上顎洞底挙上術時の出血への対処法と予防策小林文夫医学博士/医療法人社団 小林歯科医院日本口腔インプラント学会専門医/ICOI認定医/DGZI専門医80

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