QDI 2016年7月
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連載はじめに1 切開線設定および外科手技のポイントの連載6回目(最終回)は、無歯顎症例である。無歯顎は種々の骨欠損をともなう比較的高齢者が多いことから、まず最終補綴物をどのように決め、それに対してインプラントの埋入部位、埋入本数をどうするか、また骨造成をするか否かなどで切開線は変化する。そして、本連載でも触れてきた上顎における上顎洞、下顎における下歯槽管やオトガイ孔、また無歯顎の上顎前歯部での切歯管など、インプラント外科の際には解剖学的注意が必要となり、当然それらとの関係で切開線の設定が変わってくる。 本稿では、無歯顎症例を分類し、それぞれの切開線設定および外科手技、そして治療計画のポイントについて解説する。無歯顎症例における治療計画の原則2 無歯顎症例のインプラント治療においては、表面性状が改良されたTiUniteなどのラフサーフェスインプラントが、2000年以降主流となっている。また特に“All-on-4 concept”がトピックスとなっており、きわめて低侵襲の外科処置と、安価な治療費で行えることから、治療オプションの1つとして利用価値があるかもしれない。しかしながら、十分な知識と術式の習得をしたうえで応用しないと、トラブルが生じる可能性がある。 また、症例によっては、人工歯肉の付与による審美性・清掃性の問題、最低の本数かつインプラント前後間距離(implant antero-posterior distance)が狭いことにより長期的に生体力学的な問題が生じる可能性、最遠心インプラントの角度付アバットメントのスクリューが緩む可能性、補綴の自由度が少なくカンチレバーを付与しても第二大臼歯間の咬合再建が難しい、といった問題点も考えられるため、筆者は積極的には応用していない。 そして、高齢者や有病者の無歯顎症例では、インプラント前後間距離およびインプラント本数を基に、生体力学的に長期予後を最優先したグラフトレス治療を原則とすべきと考える。しかし、無歯顎症例でも高齢者でなければ、補綴主導型インプラント治療に基づき可能な限り理想的なインプラントポジションに、かつ歯軸方向にインプラントを埋入することにより、機能的かつ審美的回復、そして長期予後も考慮すべきであり、必要であれば、歯槽堤造成も行うべきであると考える。無歯顎症例の分類と治療計画31)上顎無歯顎症例 治療計画は骨量(インプラントの埋入部位と本数、骨造成の有無)と骨質(インプラントの種類と本数)によって左右される。歯槽骨吸収だけでなく、上顎洞との関Dr. 堀内が基礎から解説!インプラント手術時の切開線設定と外科手技のポイント第6回無歯顎症例の切開線設定および外科手技のポイント堀内克啓奈良県開業:中谷歯科医院大阪大学歯学部臨床教授/長崎大学大学院顎口腔再生外科学講座非常勤講師/岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座非常勤講師74Quintessence DENTAL Implantology─ 0566

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