QDI 2016年7月
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連載連載Quintessence DENTAL Implantology─ 0578はじめに 最終回となる第4回で取り上げるテーマは、上顎洞底挙上術における術後のトラブルです。なかでも本稿では、術後の血腫形成、骨補填材料の漏出、上顎洞内の感染および上顎洞炎について解説していきます。上顎洞底挙上術後に血腫を形成することがあると言われていますが、その原因、診断のポイントを教えてください。Q1 上顎洞内外の出血の要因は、必ずしも解剖学的な問題、手術操作上のミスだけではありません。診断時の全身疾患の見落としが原因で起こることもあります。具体的には、特に出血をともなう疾患、抗血栓療法(抗凝固療法、抗血小板療法)、肝疾患、糖尿病などです。特に最近では抗血栓療法を行っている患者は多く、これは問診における必須項目だと言えるでしょう。血腫の原因が手術操作上のミスなのか、全身疾患なのか、先生はどこで見分けているのですか?Q2 たとえば外科のテクニックエラーであれば、術後すぐに血腫や出血が見られます。術後1週以降は、通常で抜糸も終わっている時期ですから、基本的な手術操作を行っている限り、まず血腫を形成することはありません。この場合は全身疾患を疑うべきでしょう。 症例1の患者はバイアスピリン(抗血小板薬)を服用しており、手術から2週間後に口腔内縫合部周辺に血腫を形成しました。骨補填材料は散乱し、骨開窓部から漏出し、縫合部周辺に沈下滞留しています。結果として骨造成不良となり、3ヵ月後に再手術となりました。血腫を形成するとしばしばこうした事態を引き起こすので、診査・診断時から注意が必要です。抗血栓療法を行っている患者が術後血腫を形成しないための予防策について解説いただけますか?Q3 最近改訂された口腔インプラント治療指針1)においても抗血栓療法患者のリスクと対応について書かれているので、少なくともこの内容は必ず頭に入れておくべきでしょう。さらに、上顎洞底挙上術においては「局所止血が可能であるか」をもとに判断していく必要があります。一般的なインプラント治療にも抑えておくべき各種の止血方法があるように、上顎洞底挙上術を行う際も、サージセルのような止血材、電気メス、レーザー、骨からの出血は骨蝋などを使用しますが、その使い方を熟知しておくことは必要です。 ただ、上顎洞底挙上術を行った患者が抗血栓療法を受けており、術中、術直後、そして症例1のような一定期間経過後の出血を起こした場合、止血の難易度が格段にQ&Aで学ぶ サイナストラブル解決塾いざという時の臨床判断力を身に付けるために第4回術後のサイナストラブルへの対処法と予防策小林文夫医学博士/医療法人社団 小林歯科医院日本口腔インプラント学会専門医/ICOI認定医/DGZI専門医86

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