QDI 2016年7月
8/8

インプラントのためのインパクトの高い論文評価連載 インプラントのためのインパクトの高い論文評価 第9回のテーマはImplant surfaceである。検索キーワードは“implant surface”とした。現在、インプラント材料としての主流であるチタン(チタン合金)の表面に、オッセオインテグレーションをより早く確実に獲得するため、さまざまな修飾方法による表面処理を行っている。オッセオインテグレーションに関する基礎研究が進むにつれ、各インプラントメーカーによる生体適合性の向上を目的とした開発が盛んになっているが、新しい表面性状に関しては長期の臨床研究の不足が指摘され、長期データの蓄積が今後の課題である。一般社団法人 日本インプラント臨床研究会(CISJ:Clinical Implant Society of Japan)サイエンス委員会(若井広明、田中譲治、岩野義弘、武田朋子、佐藤博俊、井汲憲治、水口稔之、笹谷和伸、芦澤 仁)、塩田 真(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科インプラント・口腔再生医学准教授)Implant surfaceのための重要キーワードベスト論文第9回Implant surface検索キーワード1.Implant surfaceの概説 初めにどのレベルでの議論が行われているかを明確にするため、Implant surfaceの概要を解説する。 公益社団法人日本口腔インプラント学会の用語集1)によると、Implant surfaceはインプラント表面と訳され、「生体組織などの液体や固体ではなく、気体(おもに大気)とインプラントとの境界面のことである。すなわち何も介在せずに外側から観測できるインプラント界面をインプラント表面とよぶ」と定義されている。また、関連語としてインプラント界面(Implant interface)を挙げ「インプラントと生体の境界面のことである。口腔インプラントは、骨組織、上皮下結合組織、上皮組織など、さまざまな組織と界面を形成している」としている。 この2つの用語の日本語での使い分けを基に、海外論文における表記を確認すると、Implant surface(インプラント表面)とImplant interface(インプラント界面)は関連語としてではなく同義語のごとく用いられている。加えて、日本の論文においても同義語として扱われているので注視されたい。 次にインプラント表面が影響を及ぼす性質を分類したい。①表面粗さ(surface roughness) 固体表面の微視的な凹凸のこと。表面粗さの表示法としては、算術粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)などがある。インプラント表面は骨との結合性を高めるために粗造化されている場合が多い。②表面処理(surface treatment) 物理的または化学的な方法によって材料表面の特性を向上させるための処理のこと。インプラント体は骨との適合性や伝導性を向上させるため、サンドブラストなどの機械加工による表面処理が行われたが、さらに陽極酸化処理、アルカリ処理、ハイドロキシアパタイトコーティング処理などのさまざまな表面処理法が工夫されてきた。③インプラント表面性状(surface texture) 材料が組織と接する場合、材料表面の凹凸や曲面の程度などの物理的要因のほかに、タンパクなどの吸着現象、ぬれや表面エネルギーなど、さまざまな要因が影響する。生体と接する材料では生体側の細胞の接着や増殖などに大きな影響を与えるばかりではなく、さらに細胞分化など複雑に影響する。表面性状は、骨に接する部分と軟組織に接する部分など、相手によって大きく異なった設計がされる。930585 ─Vol.23, No.4, 2016

元のページ 

page 8

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です