QDI 2016年9月
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特別座談会特別座談会非定型の“歯痛”を診断できず次々抜歯してインプラントを埋入したことで発症(井川症例4)タイプC井川症例4-a 58歳、女性。病悩期間10年。非定型(特発性)歯痛の“歯痛”を診断できず次々抜歯→インプラントに置換→うつ病という流れをたどった。患者年齢および性別:58歳、女性病悩期間:10年主訴:・3の打診痛+4567の自発痛。・抑うつ気分。・耳閉感(耳鼻咽喉科では異常なし)。現病歴:・10年前から左上臼歯部が痛むようになった(VAS 24/100)。・歯科を何軒か受診するも、いずれも異常なしとの診断だった。・A歯科で7を抜歯。その後456も順番に痛み出した(持続性疼痛)ため、次々抜歯→インプラントにしたが痛みが持続。歯科、耳鼻咽喉科で異常なし。・NSAIDs(ロキソニン®・ボルタレン®)無効。・その後1も痛み出し、抜髄→抜歯→インプラントにした(痛みなし)。・「痛いというと抜歯してインプラントにされる」ため、B歯科に転院→当科紹介。背景:・10年前、痛み出る前にストレス(++)。 ①息子が広汎性発達障害(初診時28歳) ②自分が子宮癌 ③母親の介護・診断:非定型(特発性)歯痛+うつ病。治療と転帰:・X年12月:初診。 →トリプタノールを10mgから開始、漸増。・X+1年7月(半年後)、トリプタノール50mgで痛みはほぼ消失。 →インプラント治療は8月頃から再開。・X+2年1月(1年後)、インプラント治療も薬物療法も完了。症例4:非定型(特発性)歯痛の“歯痛”であることを診断できず次々と抜歯【タイプC】井川 この症例は、先ほどお話しした「非定型(特発性)歯痛」の症例です。これは中枢性の歯痛なのですが、それを診断できないで次々と抜歯し、インプラントに置換したのだけれども、やはり痛みが治まらなかったという症例です。これもよくあるパターンです。 この患者さんは、最終的にはうつ病になってしまい、私たちの外来にいらっしゃいました。58歳の女性で、病悩期間は10年です。主訴は4567のインプラントの自発痛です。それに加えて3の打診痛があって、耳閉感(耳が詰まっているような感じ)と、抑うつ気分が初診時に認められました。 現病歴として、10年前、まだ歯があった頃から、左上の歯が痛むようになりました。そのときの痛みはVAS 24/100ですから、強い痛みではなかったのです。歯科を何軒か受診したけれども、「歯にはどこにも異常がない」という診断でした。脳が興奮して歯が痛いと感じるけれど、歯には何も問題がないという非定型(特発性)歯痛の状態です。 その間、主治医の先生は痛みをコントロールしようとして、次々と抜歯を行っています。結果的に7、4、5、6と4本を抜歯してしまいました。抜歯後も痛みはまったく取れなかったのですが、さらにその先生は病んでる部位にインプラントを埋入したわけです。もちろん痛みは改善しないわけですので、歯科、耳鼻咽喉科を受診し24Quintessence DENTAL Implantology─ 0680

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