QDI 2016年9月
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はじめに 抜歯直後の抜歯窩へインプラント埋入を行う術式は、1976年にSchulteとHeimke1)によって「Immediate Im-plant」として初めて報告され、その後、1989年にはLaz-zara2)が術式の外科的・補綴学的優位性を示した。2000年以降にはその成功率や、インプラントと抜歯窩骨壁とのギャップに対する併用処置に関する組織学的検証やデータなどが報告され3、4)、特に単根である前歯部においては審美的優位性が高い方法として臨床応用されている。一方、上下顎臼歯部、特に複数根臼歯部に対する抜歯後即時インプラント埋入では、抜歯窩とインプラント径の不適合や歯槽中隔の存在により、インプラント受容床形成の問題や解剖学的側面などの問題点が大きいことをAtiehら5)は示している。 本稿では、臼歯部抜歯後即時インプラント埋入後の骨形態の変化を評価し、筆者らの考える臼歯部抜歯後即時インプラント埋入の優位性について報告する。臼歯部抜歯後の治癒形態 大臼歯抜歯後の経時的変化を図1に示す。抜歯窩に対する積極的治療介入の有無にかかわらず、治癒期間後の骨形態は類似している。これらはBuserら6)が調査した臼歯部無歯顎部のCBCT像と近似した形態である。また、治癒後の骨形態では、抜歯部の垂直的骨欠損の回復が著明である。待時埋入の問題点 骨性治癒期間を経た部位(Healed site)へのインプラント埋入では、インプラントによって貫かれた皮質骨が、インプラント受容床形成操作や埋入操作により機械的損傷や熱的影響を受けやすく、皮質骨が厚く硬いほどその影響は大きくなる。また、ナイフエッジ状に残存した骨頂部を含む埋入では、プラットフォーム部周囲を菲薄化した皮質骨が取り囲み、血液供給が乏しくなった結果、骨性治癒期間中に吸収される(図2)。 待時埋入は抜歯後6ヵ月以上経過時と分類される7)が、複数根歯に対する抜歯窩温存術(ソケットプリザベーション)後の待時埋入には注意が必要である。現在、日本国内で薬事承認されている骨補填材料は、非吸収性もしくは遅延吸収性である。これらの骨補填材料を用いたソケットプリザベーションから6ヵ月経過時において、骨補填材料が自家骨へ置換されるとは考えにくく8)、骨質は脆弱で初期固定を得るには不十分である(図3)。結インプラント治療計画臼歯部抜歯後即時インプラント埋入の術式と予後に関する考察前編:CTによる骨形態変化の検証髙橋 聡*1、小濱忠一*2*1福岡県開業 たかはし歯科クリニック 連絡先:〒822-0033 福岡県直方市大字上新入2035番地2*2福島県開業 小濱歯科医院 連絡先:〒971-8151 福島県いわき市小名浜岡小名2-4-10530709 ─Vol.23, No.5, 2016

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