QDI 2016年11月
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はじめに 今日、抜歯後即時埋入インプラントの生存率は、遅延埋入のインプラントと比較して、審美領域の単独埋入のみならず臼歯部でも同等であると報告されている1)。 この根拠に基づき、前編ではインプラント周囲骨形態の変化に関して、臼歯部抜歯後即時インプラント埋入後から上部構造装着後に至るまでの経時的変化について検証を行い、臼歯部抜歯後即時インプラント埋入は有用性が高いことを示した。しかし、歯槽中隔へのインプラント受容床の形成などの外科操作に技術的困難がともなうこと2)も示唆した。 本稿では、臼歯部抜歯後即時インプラント埋入の適応診断、複根歯抜歯窩の形態的分類に基づいた埋入術式の診断および選択基準について考察する。また、外科的問題点に対する解決方法の一つとして、残根を利用した受容床形成法3)を紹介し、実際の臨床経過を解説する。臼歯部抜歯後即時インプラント埋入に必要な診査・診断 全身的適応症・禁忌症4、5)は通常埋入と同様であり、本稿では割愛する。1)局所的適応症・禁忌症 埋入術野の硬組織や解剖学的危険因子との関係は、CBCT(Cone Beam Computed Tomography)で撮影した画像による三次元的検証の信頼性が高く6)、表1に示す項目を術前に診査する。解剖学的危険因子との関係や硬組織の内部性状の確認には、スライス幅の細かいCT画像が必要である(図1)。 術前診査において表2に挙げられる禁忌事項3、7〜16)が含まれる場合は、問題解決を先行させた後の施術、もしくはインプラント補綴以外の補綴方法を検討する必要がある。2)抜歯対象歯とインプラント埋入に関する診査 Healed siteへの埋入と異なり、抜歯後即時インプラント埋入では抜歯窩に対する埋入位置を第一に考察する傾向が強い。特に、シミュレーションソフト上のクロスセクショナル像で埋入予定部位の硬組織診断に傾倒すると、対合歯や隣在歯、歯列全体の情報が不足しやすい。 抜歯窩に従った埋入が正しいとは限らず、最終補綴物製作に適した埋入方向や埋入位置を診査し、外科処置に反映させる必要がある(図2、3)。インプラント治療計画臼歯部抜歯後即時インプラント埋入の術式と予後に関する考察後編:臼歯部抜歯窩形態に基づいた埋入術式の診断・選択基準髙橋 聡*1、小濱忠一*2*1福岡県開業 たかはし歯科クリニック 連絡先:〒822-0033 福岡県直方市大字上新入2035番地2*2福島県開業 小濱歯科医院 連絡先:〒971-8151 福島県いわき市小名浜岡小名2-4-10610881 ─Vol.23, No.6, 2016

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