QDI 2016年11月
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インプラントのためのインパクトの高い論文評価連載 インプラントのためのインパクトの高い論文評価 インプラントに関連する重要キーワードについて、インパクトの高い論文を全12回に亘ってテーマごとに検証してきた。最終回となる第12回のテーマはPeri-implantitisである。第1回から11回まで検証してきたことを踏まえれば、ほとんどのインプラント治療を成功裡に終えることができるが、インプラントの長期的成功の最大の妨げとなるのがPeri-implantitisである。Peri-implantitisは、機能下のインプラント周囲における発赤、腫脹、プロービング時の出血、排膿およびインプラント周囲支持骨の喪失を特徴とし、細菌感染あるいは二次的な過重負担にともなって生じる、不可逆性の炎症過程である。一般社団法人 日本インプラント臨床研究会(CISJ:Clinical Implant Society of Japan)サイエンス委員会(岩野義弘、田中譲治、武田朋子、井汲憲治、水口稔之、笹谷和伸、佐藤博俊、若井広明、芦澤 仁)、塩田 真(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科インプラント・口腔再生医学准教授)Peri-implantitisのための重要キーワードベスト論文第12回Peri-implantitis検索キーワード1. 国内外における Peri-implantitisの評価1)海外における評価 AlbrektssonとIsidor1)は、不可逆性の歯周疾患である歯周炎と類似した疾患として、骨吸収をともなう不可逆性のインプラント周囲病変をPeri-implantitis(インプラント周囲炎)と定義したコンセンサスレポートを報告した。罹患率に関しては、27編のシステマティックレビュー(SR)が報告されており、最新のメタ分析2)の結果、患者レベルで平均21.7%とされている。診断基準が明確でなく3)、その違いは同一患者における発症率を変化させる4)ため、必ずしもデータの信頼度が高いとは言えないが、LangのCIST5)を診断基準とする報告が多い。アバットメント連結後2週間以内に歯周組織と近似した細菌叢がインプラント周囲組織に形成される6)とされ、主たる原因菌はRed Complex(P. gingivalis、T. denticola、T. forsythia)7)であることが示されている他、歯周病原細菌であるE. corrodensやF. nucleatumの感染が高い割合で認められる8)というもの、あるいはS. aureusの感染がその発症に関連するとの報告9)も認められる。Estepona Consensus10)のように、Peri-implantitisが歯周炎のような免疫反応の結果として生じたものではないとの考え方も存在する。2)国内における評価 本邦ではPeri-implantitisに関する研究報告はわずかである。罹患率に関するSRは存在しないが、九州インプラント研究会がデータをまとめており、10年で約13%と報告している。診断は欧米同様CISTを用いることが多く、さまざまな学会の治療指針においてもその使用が推奨されている。土永ら11)はRed Complexとの密接な関連を示唆しており、現在日本臨床歯周病学会において大規模疫学調査が実施されている。治療法として、アジスロマイシンを用いたfull-mouth SRPの有効性が報告されている12)他、β-TCPパウダーを用いたエア・アブレイジョン13)やEr:YAGレーザーの応用14)など、外科治療時に各種除染法が積極的に応用されている。 以上を踏まえ、今回CISJサイエンス委員会では、インプラント領域におけるインパクトの高いPeri-implan-titis関連論文をピックアップし、エビデンスの現状について整理したい。890909 ─Vol.23, No.6, 2016

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