QDI 2017年1月
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なり、副腎皮質からは上述の多種のホルモンが分泌され、それらをまとめて副腎皮質ホルモンと総称している。副腎髄質からは、カテコールアミンホルモンであるエピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)が分泌され、身体のストレス反応の調節を行っている。3ステロイド剤にはどんな種類があるのか? ステロイドは大きな有用性があるが、一方では重い副作用があるため、その副作用を限りなく軽くする試みとして、多くの合成ステロイド剤が開発された。合成ステロイド剤は、作用時間で分けると短時間作用するものとしてコルチゾール、中時間作用のものとしてプレドニゾロン、トリアムシノロン、長時間作用のものとして、デキサメタゾン、ベタメタゾンがある。ステロイドは力価と半減期を考慮して使用することが多い。表1にステロイドの種類と力価をまとめた。しかし、現在なお、ステロイド薬以外に有効な治療薬のない疾患や病態があることも事実である。歯科の臨床の中でもっとも頻繁に使われるのは、いわゆる口内炎の薬として知られるケナログやアフタゾロンのような軟膏、すなわち局所に用いる外用薬である。しかし、ステロイドは副腎皮質ホルモンであり、全身的に長期に使用すると、体内からの副腎皮質ホルモンの産生が抑えられる。このことが歯科治療、特に抜歯やインプラント治療においては、後に述べる「離脱症候群」の出現につながる可能性があり、大変重要である。 ステロイドホルモンとは、ステロイド骨格と呼ばれる化学構造をも持つホルモンの総称で、作用により、性ホルモン(アンドロゲン、黄体ホルモンなど)、糖質コルチコイド(グルココルチコイド)、鉱質コルチコイド(ミネラロコルチコイド)などに分類される。ステロイドホルモンは副腎から産生される。副腎は腎臓の隣にあり、大きく2層構造をしている。中肺葉由来の副腎皮質および外胚葉由来の副腎髄質から1はじめに 近年、加速度的に増加している高齢患者にインプラント治療を行うにあたり、一般臨床医がもっとも必要としている情報が「全身疾患を有する患者への治療前後において、どのようなリスクに留意すべきか」ではないだろうか。 本連載では、「患者が服用している薬」という視点から、全身疾患患者に対するインプラント治療について解説をし、日々の診療に役立つ情報をご提供していきたい。2ステロイドとは? ステロイドは「万病の薬」として知られている。強い抗炎症作用と免疫抑制作用をもち、さまざまな病気の治療に使われる。しかし、一方でさまざまな副作用を持っている。 副作用の中には軽症のものから、出現したらただちに対応しなければならない重症副作用がある。したがって「ステロイド薬はもろ刃の剣」と言われる。ステロイド剤を服用している患者の周術期リスクマネージメント連 載series第1回患者の服用薬から学ぶ全身疾患症例のインプラント治療と周術期リスクマネージメント高橋 哲(Tetsu Takahashi)東北大学大学院歯学研究科 顎顔面・口腔外科学分野104Quintessence DENTAL Implantology─ 0104

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