QDI 2017年3号
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抑制作用が強い。図1にはnon-N-BPのエチドロネート(Etidronate、Eti)の骨吸収抑制活性を1.0とした場合の他のBPの相対活性も示す。 その作用機序は、骨に蓄積し、骨ハイドロキシアパタイトと強固に結合する。そして、反復投与により骨に蓄積し、破骨細胞に取り込まれ、アポトーシス(細胞死)を誘導することにより、骨吸収を抑制する(図2)。【2】 BPの種類 BPには静脈注射薬(以下、静注薬)と経口薬がある。 静注薬は、悪性腫瘍の高カルシウム血症を含むがんに関連する症状の管理、また乳がん、前立腺がんおよび肺がんなど固形腫瘍における骨転移に関連した骨関連事象(SRE)【注】、および多発性骨髄腫における溶解性病変に関連する種々の症状の管理のために使用される。また骨粗鬆症に使用されるものとして、ゾレドロネート(年1回)、イバンドロネート(3ヵ月ごと)が挙げられる。かけとして発症し、きわめて難治性の疾患であることが報告されており、われわれ歯科医師が細心の注意を払って対応しなければならない重要な疾患となっている。インプラント治療も例外ではなく、日本でもインプラント治療を契機として発症したBRONJの報告もされている。 そこで、今回はMRONJを起こす可能性のある骨吸収抑制薬に焦点を当て、これらの薬を服用している患者の周術期管理について述べる。2骨吸収抑制薬と1.ビスフォスフォネート製剤【1】 BPの作用機序 BPは破骨細胞の活動を阻害し、骨の吸収を防ぐ医薬品である。ピロリン酸のP-O-P結合をP-C-Pにした非加水分解性の化合物であり、多くの誘導体が合成され、広く臨床応用されている。興味深いことに、Cに結合する側鎖に窒素(N)をもつN-BP は、Nのないnon-N-BPよりもはるかに骨吸収1はじめに 近年、骨転移あるいは骨粗鬆症の治療薬として用いられるビスフォスフォネート製剤(以下、BP)を投与されている患者で、抜歯などの侵襲的歯科治療を受けた後に、顎骨壊死(Bisphos-phonate-Related Osteonecrosis of the Jaw、BRONJ)が発生し、大きな問題となっている。2003年Marxが報告1)して以来、BRONJは欧米だけでなく、わが国でも多く報告されている2)。 さらにBPとは作用機序の異なる骨吸収抑制薬である抗RANKL抗体のデノスマブでもBPと同様の顎骨壊死が生じ、また血管新生阻害薬のベバシズマブに関する顎骨壊死が生じると報告されるようになり、米国口腔外科学会(AAOMS)では、2014年のポジションペーパー3)で、BRONJの呼称を「MRONJ」(Medication-Related Os-teonecrosis of the Jaw:薬剤関連顎骨壊死)と変更した(以下、MRONJと表記する)。 MRONJの多くは抜歯などをきっ骨吸収抑制薬を服用している患者の周術期リスクマネージメント連 載series第3回患者の服用薬から学ぶ全身疾患症例のインプラント治療と周術期リスクマネージメント高橋 哲(Tetsu Takahashi)東北大学大学院歯学研究科 顎顔面・口腔外科学分野110Quintessence DENTAL Implantology─ 0474

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