QDI 2018年1号
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 歯に欠損を生じた患者にとって、インプラント治療が有効な治療法であることは紛れもない事実である。しかし残念ながら、それは万人に適応可能な方法ではない。絶対的禁忌症は少ないと思われるが、相対的禁忌症は色々と考えられるだろう。顎骨の幅径や高径の不足や経済的な理由も含まれるかもしれない。相対的禁忌症は問題となっている事象を克服さえすれば、インプラント治療が可能となる症例だと考えられる。 本稿では、そのような相対的禁忌症の一つと考えられる、「開口量が少ない症例に対する対応」についてインプラント治療の各ステップごとに述べてみたい。はじめに 日本人の平均的開口量は塚原ら1)によれば、男性で55.5mm、女性で50.6mmとされている。体格によっても開口量に違いあるとされているので、小柄な患者の場合には開口量も小さくなると考えられるが、顎関節や周囲組織の炎症や腫瘍などにより開口制限が生じる場合もある。炎症や腫瘍などの場合には原因が取り除かれれば開口量が増大する場合もあるし、開口訓練により改善する場合もあるが、体格の問題、関節リウマチなどにより関節そのものに変形を生じている場合などでは改善は困難であろう。 では、開口量が少ない場合の問題点には何があるだろうか。最初に突き当埋入手術たる問題は、インプラント埋入時ではないだろうか。インレーやクラウンを第二大臼歯に行う時にストレスを感じている読者も多いと思う。これがインプラントの埋入となると、話はもっとエスカレートする。形成用のタービンバーと比較して、圧倒的にドリルが長いからである。筆者が日常診療でよく使用しているインプラントシステムのドリルの写真を示す(図1)。 写真に示すように、ドリルの長さは短いものでも32mm、長いものになると40mmもある。コントラハンドピースに装着するとさらに5mm程度延長される。つまり、上下顎間に最低でも45mmの垂直的クリアランスが必要ということになる。 開口障害がない場合であっても、ガイドサージェリーを行うとなると手術が困難となることがある。ドリルガイドを使用することにより、単純に口腔内が狭くなることはもちろん、ガイドサージェリー用のドリルは通常のそれよりも長く、40~45mmある(図2)。 では、ガイドサージェリーは行えないのだろうか。ドリルガイドを口腔内に装着することができないほど開口量通常用ドリルガイドサージェリー用ドリル010203040010203040図1 通常の手術用のドリルの例(Nobelbiocare社)。図2 ガイドサージェリー用のドリルの例(Nobelbio-care社)。図1図2 開口量の少ない患者に インプラント治療のトラブルと 昭和大学歯学部インプラント歯科学講座 石浦雄一 (Yuichi Ishiura)56Quintessence DENTAL Implantology─ 0056特集2

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