QDT5月
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85生物学的形成テクニック(BOPT)―歯周病学的に健康な歯の補綴修復物に対する新しいアプローチ―85序論 天然歯への固定性補綴物を複雑化させている臨床的要因のひとつに、歯肉辺縁が根尖側へ移動することによって、審美的に満足が得られなくなることが挙げられる1,2。 歯肉辺縁が根尖側へ移動する傾向には、いくつかの要因が関連している。・角化歯肉の不十分な質と量(薄いと退縮しやすい)・ 補綴処置を行っている間(形成、歯肉圧排)に生じる外傷への反応・ 補綴処置のエラー(開いたマージン、生物学的幅径の侵犯、水平的なオーバーカントゥア)による慢性的な炎症・不適切なブラッシングによる外傷 修復処置に関係のある要因の中で、特に関連があるのは形成方法とフィニッシュラインの形態である。 通常、支台歯形成には2つの種類がある3。ホリゾンタルとも呼ばれるフィニッシュラインのある形成と、フェザーエッジといわれるフィニッシュラインのない形成である。 普遍的に受け入れられている分類はないが、さまざまなタイプの形成とマージンの定義が提唱されてきた4,5。・ショルダー・ベベルのあるショルダー・斜めのショルダー(50°と135°)・シャンファー・ベベルのあるシャンファー 水平的な形成は臨床的歯冠と解剖学的歯冠が一致し、歯周組織が健康な場合に選択され、補綴物のマージンはセメント‐エナメルジャンクション(CEJ)付近に設定される。 フィニッシュラインのない形成はより保存的であり、歯周疾患により支持が失われた解剖学的歯冠と臨床上の歯冠が一致しない場合に用いられ、クラウンのマージンは歯根部分に設定される6-10。 水平的形成と垂直的形成の違いは、前者は歯科医師がマージンを設定し、明確に定義されたラインが歯質に残っており印象や作業模型に印記される。おそらく補綴医が水平的な形成を好む理由はこれだろう。一方、垂直的形成では、マージンを歯肉組織の情報に基づいて歯科技工士が設定する。はっきりと定義されたラインがないこと、良好な審美的な結果を得るのが難しいこと、陶材の焼成中や機能的負荷がかかった時に金属のマージンがゆがむ可能性があること、さらに“オーバーカントゥア”になってしまうことから、この形成法は炎症や歯肉の退縮を引き起こすものと考えられてきた11,12。1.生物学的形成テクニック(BOPT)1)臨床的利点・形成が施されていない歯における解剖学的なCEJの消去および形成された歯において設定されているフィニッシュラインの削除・歯肉溝内(侵襲がコントロールされた溝)で、修復物のマージン適合に影響を与えずに歯冠側、根尖側のどちらでも異なったレベルにフィニッシュラインを設定できる。・理想的な審美的歯肉構造を生み出すエマージェンスプロファイルを作ることができる(適合的な形態とプロファイル)。この方法をとれば、新しい補綴的セメント‐エナメルジャンクション(PCEJ)を作れるだろう15,16。・歯質の保存・処置が簡便で迅速・ テンポラリークラウンのリマージニングや調整が容易・印象採得が容易QDT Vol.39/2014 May page0733

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