QDT8月
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はじめに 高度先進医療として、限られた大学病院において臨床応用されてきた小臼歯におけるハイブリッド冠が、さる2014年4月に「CAD/CAM冠」の名称で保険収載された。このことは各方面から歓迎される一方で、否定的な意見があることもたしかである。CAD/CAMの歯科への応用は筆者が知る限り、10年ほど前から急速に臨床の場に広がり、ここ5年で全国的な知名度を得るに至った。当時は一部のマニアのためのギミック、あるいは玩具といった評価が多く、正直なところ評価が高いものではなかった。未だに、歯科技工はアナログ作業が第一という考え方も根強いことはたしかである。 しかしながら、CAD/CAMは昨今のメタルフリーのニーズや、金属価格高騰もあいまって、その汎用性をますます広げている。歯冠修復はもちろん、義歯やインプラント治療、そして矯正治療など、歯科医療の多くの分野にとってなくてはならない存在になりつつある。 医療財政が逼迫しているとはいえ、歯科保険に関する財政はここ数十年来横ばいに抑えられている。これは、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士の日々の努力によって、国民の口腔環境を維持してきた結果にほかならない。また、医科においては多くの先進技術が保険収載される一方で、歯科においてはそれが極端に抑えられてきた。ゆえに、今回のCAD/CAM冠の導入は歯科業界にとって大きな衝撃であろう。歯科医師側はもちろん、歯科技工士、はたまた製造メーカーの混乱ぶりは周知のとおりだが、導入から3ヵ月を経た現在ではだいぶ落ち着きを取り戻してきたようだ。 また、材料の供給は現在のところ(2014年6月現在)、ジーシー・松風・スリーエムヘルスケア(3M ESPE)の3社からに限られているため(図1)、当初は供給量について混乱が生じていたが、こちらも現在では落ち着きを見せはじめてきた。そこで本稿では、このCAD/CAM冠のための支台歯形成とその接着方法について、材料特性を含めて解説していきたい。図1 2014年6月末現在で利用可能なCAD/CAM冠用ブロック。図中左より、松風ブロックHC(松風)、LAVA Ultimate(3M ESPE,スリーエムヘルスケア)、セラスマート(ジーシー)。■2014年6月末現在で利用可能なCAD/CAM冠用ブロック

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