QDT10月
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はじめに ―デジタルデンティストリーへの序章― 愛知学院大学(以下、本学)におけるデジタルデンティストリーへの取り組みの端緒は、今からさかのぼること16年前のホッツ床製作であった。本学附属病院には、約500人に1人の割合で発生するといわれる1口唇口蓋裂患者が来院される。口蓋裂患者は、授乳のために口腔と鼻腔を閉鎖する必要があるが、その閉鎖に用いられるのがホッツ床である。このホッツ床の製作に必要な印象採得は、気管内挿管等の万全の準備をした上で、全身麻酔下または拘束状態で行われるのであるが、しかし、ごくまれに、印象材の流入にともなう気道閉塞やショックなどで残念ながら死亡に至る新生児もおられた。そこで、「もし、光を当てるだけで口蓋部の印象採得ができれば、ひとりでも多くの患者さんを救うことができるのではないか」と始めたのが、光学式印象であった(図1)。当初は、顔面部しかスキャンできないラインレーザーによる三角測量方式であった2-4。 歯列模型の三次元形状(以下、3Dモデル)構築は、このラインレーザーによる三角測量の研究を応用して開始された。歯列のような複雑な形状には、スキャンする角度によって、図2のようにA点の位置座標を測定するはずがB点の座標を読み込んでしまったりする■筆者が当初使用していた3Dスキャナー■光学式スキャナーで生じるデータの欠落図1 3Dスキャナー(VOXELAN,浜野エンジニアリング)と、そのスキャン結果。当初は、顔面部しかスキャンできないラインレーザーによる三角測量方式であった。図2a~c 光学式スキャナーで生じるデータの欠落について示す。a:歯列のような複雑な形状には、スキャンする角度によって外れ値が生じる。b:外れ値除去によるデータ欠落。c:アンダーカットによるデータ欠落。abcレーザー発射部受光部

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