QDT11月
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介護の現場にこそ補綴の力を― 噛める入れ歯をどう届けるか?―(前編) 現在の日本は世界に例をみない超高齢社会に突入してしまい、その上少子化の阻止・改善もままならず、社会保障制度も危機を迎えている。さらにわれわれが属する医療の世界においては、国の財政難を理由に医療保険や介護保険の報酬額が思ったようには伸びず、頭打ちの状態が続いている。しかし、患者やクライアントの健康への要望は多様化しており、それに呼応した医療行為や介護サービスを提供しないわけにはいかない。歯科はこれまでにも、国の診療報酬改定において大幅な減点改定を余儀なくされており、厳しい現実を突きつけられているといっても過言ではあるまい。 昨今、国の健康に関する政策においては認知症に対する予防処置と訪問診療が奨励され、大きく取り上げられている。そしてその中で、歯科医師は健康寿命の延伸にともなってますます重要となる口腔ケアを提供する職業であるかのように今さらながら謳われているが、本来、われわれ歯科医師は個々の患者やクライアントの口腔内の状況を診査し、口腔ケアの要否とその方法を判断し、歯科衛生士などを通じて患者やクライアントに提供させることが本来の職務であることを忘1)訪問診療において、現場では何が必要なのか? 昨今いわれている摂食嚥下機能の障害にともなう処置やその対応法は、訪問診療において非常に重要な知れてはならないと考えている。 医療連携の必要性は、これまでも、そして今後も国民の健康を守る意味において変わることはない。日本人の死因の順位の1位は悪性新生物、2位は心疾患、3位は脳血管疾患、4位は肺炎、そして5位が老衰、と厚生労働省では発表している。しかし、この中で5位の老衰は上位の4疾患とはかけ離れた数値になっているため、日本人の死因のほとんどが上位の4疾患で占められているといっても過言ではないであろう。このことからも、がん手術の周術期における口腔ケアや、誤嚥性肺炎のリスクの高い要介護高齢者のための口腔ケアが重要であることは周知の事実であり、筆者としてもその必要性は認識し、より求められていくことであると感じている。 しかし、その必要性について述べる前に、われわれ歯科医師が口腔領域での感染や障害の治療、そして機能回復を図ることが、その後に行われる口腔ケアの効果をより高めるのではないだろうか。その点を踏まえ、本題に入っていきたい。識であることは否めない。そして、そのような患者に対して医師や歯科医師、そして歯科衛生士や看護師などが互いに連携しあう必要も生じてきている。嚥下機能が低下、あるいは喪失してしまっているか否かを判断するために、一昔前ではVF(嚥下造影検査)、そしはじめに1.問題提起:摂食・嚥下障害に対する知識は重要。でも、もっと大事なことが!

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