QDT2015年9月
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動揺歯の補綴を考える(前)3131 社会・患者の要請と歯科医学の進歩、そして歯科医師自身の意識の変化により、ますます「歯が残る」時代を迎えた。平成23年度の歯科疾患実態調査の結果から、8020達成者(80歳で20本以上の歯を有する者の割合)は38.3%であり、平成17年の調査結果24.1%から大きく増加している(図1)。しかし、4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合は55歳以上では減少傾向を示していないどころか、75歳以上では増加傾向を示している(図2)。この2つのデータから、多くの努力によって「残された歯」の大多数は歯周病に罹患している可能 補綴治療を成功に導くためには、歯周治療における炎症因子の除去や力のコントロールが重要と考えている。とくに、通常の咬合力でも二次性咬合性外傷を惹性が高いことが推察される。歯周病罹患歯の歯冠-歯根比の悪化や支持組織量の減少による動揺の防止、欠損補綴の支台歯、または鉤歯の加強固定など、臨床的に固定が必要となる症例に遭遇する機会がますます増えてきた。しかし補綴物を用いた固定には、エナメル質の切削被害や、補綴物マージンの適合、連結精度の問題があり、その応用には慎重な対応が求められる。 そこで本稿では、この固定の話題を中心に「動揺歯の補綴」に対する筆者の取り組みを、症例の経過を交え、2回にわたって提示させていただく。起するような、中等度以上に進行した歯周病症例でその傾向が顕著である。病的な動揺を起こす原因は支持組織量の減少を代表として、さまざまなことが考えはじめに1. 症例1:歯周治療の重要性を再認識した症例(一次固定)20本以上の歯を有する者の割合の年次推移4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合昭和62年平成5年平成11年平成17年平成23年100908060504030201007040~4445~4950~5455~5960~6465~6970~7475~7980~8485~(%)(歳)平成11年※注平成17年平成23年605040302010015~1920~2425~2935~3940~4445~4950~5455~5960~6485~(%)30~3465~6970~7475~7980~84(歳)図1 平成23年度の8020達成者は38.3%であり、平成17年の調査結果24.1%から大きく増加している(本図は平成23年度歯科疾患実態調査より作図)。図2 4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合の年次推移(本図は平成23年度歯科疾患実態調査より作図)。※注1)平成11年と平成17年以降では、1歯あたりの診査部位が異なる。※注2)被調査者のうち対象歯をもたない者も含めた割合を算出した。QDT Vol.40/2015 September page1275

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