QDT 2016年11月
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72QDT Vol.41/2016 November page 1584 多くの研究者や学者は、上下顎第一大臼歯に咬合の要としての役割があると唱えている。咀嚼時に食物をすり潰す機能として中心になるという考えや、上下顎第一大臼歯を喪失すると、全顎的な咬合の崩壊が始まるとも言われている。また無歯顎においては、上下顎第一大臼歯の人工歯の排列位置によって義歯の安定が左右されるとまで言われている。 われわれが考える理想的な咬合状態としては、強力な咬合力(筋力)が発揮された場合に前歯や犬歯は過度な側方力から臼歯群を保護し、また臼歯は強力な垂直力から前歯群を保護するという相互保護(ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン〔Mutually protected occlusion〕、図1)という基本があり、この考えは広く臨床に用いられている。 つまり咬頭嵌合時に上顎の中心窩に下顎遠心頬側咬頭が嵌合し、下顎中心窩に近心上顎舌側が嵌合することで咬合高径を維持し下顎位を保持することで、咬合圧を受け止める。このように嵌合することで、上顎の斜走隆線部のリトルーシブバリアが機能し、顎関節を咬合圧から保護し、また前歯部においても垂直的な咬合圧による過負荷から保護することができる。 以降は、咬合様式として機能咬頭が対合する歯の隣接面部の辺縁隆線に噛みこむ、カスプ・リッジ、つまり一歯対二歯の咬合様式(図2)を基本として、咬合運動を説明していきたい。大臼歯の役割Guide areaSupport area図1 咬合は、強力な咬合力(筋力)が発揮された場合、前歯や犬歯は過度な側方力から臼歯群を保護し、臼歯は強力な垂直力から前歯群を保護するという相互保護(Mutually protected occlusion)という考え方を基本としている。図2a、b 以降、機能咬頭が対合する歯の隣接面部の辺縁隆線に噛みこむ、カスプ・リッジ(一歯対二歯の咬合様式)を基本として解説していく。abFeature article ♯2

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