QDT 2017年1月
6/8

Redirecting ScrewScrew Channel Position ―最新デジタル技術で覚醒するスクリューリテインの可能性―105 近年、インプラント補綴もデジタル化が進み、個々の患者に合ったカスタムメイドのアバットメントやフレームワークをCAD/CAMシステムにより容易に製作することが可能になり、より審美的に、また適合においてもより精度の高い補綴物を患者に提供できるようになった。 しかし、より簡便で審美的だという理由で、その補綴物様式をすべてCAD/CAMアバットメント&上部構造体、いわゆるSub Strcture & Supra Structure デザインで安易にセメント合着する術者が近年相当増加してきているように思われる。 この流れは、1980年代後半からUCLAがNon-Segmented Abutment(いわゆるUCLAアバットメント)を使用しはじめたことに端を発する。これは、用意されたキャスタブルパターン上に術者が希望する形態にワックスアップ後、金合金などで鋳造したアバットメントに上部構造をセメント合着するものであった1。また、1990年代初頭からは当時のUSCの教授らが開発したDIA Abutmentも登場した。これはいわゆるプレッパブルアバットメントであり、既製の金属製アバットメントを歯科技工士がミリング加工して任意の形態のカスタムアバットメントに加工し、そこに上部構造をセメント合着するものであった。これらのテクニックは、その審美性が評価され世界中に飛び火した。 これは当時の南カリフォルニア地域における審美インプラント補綴に対する意識がいかに高く、また進んでいたかがうかがえる歴史的背景のひとつである。米国内でこのようなシチュエーションで仕事をしていた筆者もまた審美インプラント補綴物を当時数多く製作していたひとりであり、また信奉者でもあった。 しかし、10年、20年と歳月が経ち、筆者らがそういった補綴物を提供した患者がリコールで大学病院や歯科医院などを訪れた際に、口腔内の状況を見て愕然とすることが日を追うごとに増加してきた。すなわち、セメント合着を行った補綴物ならびに周囲の軟・硬組織の状態を注視した場合、目も当てられないような状況が多く見受けられるようになってきたのである。 こういった経験を踏まえ、現在ではセメント合着から、できるかぎりの症例で近代デンタルインプラントの父であるP.I. Brånemarkが開発当時から提唱していたスクリューリテインデザインに原点回帰するよはじめに図1a、b インプラントの埋入角度により、アクセスホールがインプラント上部構造の軸面に露出してしまう症例は多い。abQDT Vol.42/2017 January page 0105

元のページ 

page 6

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です