QDT 2017年1月
8/8

141第1回 問題定義! 患者本位の補綴治療とは? ―これまでの補綴治療、歯科技工を考察する―いる。それゆえに、補綴新技術のほとんどが審美的要件のみに適応されており、多くの歯科医師や歯科技工士がそれらの技術を駆使することで、高度で先進的な審美修復を可能にすることだけに魅力を感じているように思われる。 補綴臨床において、インプラントも考慮した芸術性の高い審美修復を施すことだけに心を奪われた補綴治療、そしてその審美修復が恒久的に継続できる咬合関係を与える補綴治療が本当に患者本位の補綴治療といえるのであろうか。 また、歯科医師と歯科技工士が患者の情報を共有できていない補綴治療が本当に患者本位の補綴治療といえるのであろうか。 さらには、ケースプレゼンテーションのために補綴最新技術を用いた補綴治療は本当に患者本位の補綴治療といえるのであろうか。 本連載では、患者本位の補綴治療を目指すことを目的に、ドイツと日本の歯科技工士による患者本位の補綴技工の取り組みについて解説する。この第1回ではこれまでの補綴治療を再考し、その問題点を考察する。 本誌の表紙にも昨年まで「Art」の文字が掲げられており、審美修復が補綴治療の主役であることは論を俟たないが、歯科医師の多くは審美修復の名のもとに健康な歯肉と調和させ、左右対称かつ歯列を整えた歯冠補綴装置の装着を目指すことで同輩と美的センスを競い合っているのではないだろうか。コントラスターを使用した術後の口腔内写真や鮮やかな赤いルージュを塗った術後の顔貌写真が本誌でも散見され、まさしく補綴治療に美しさやアートを求めているといっても過言ではない。 歯科技工士も審美技工の名のもとに、天然歯と見違えんばかりの素晴らしい色調と形態を再現できることを目指して同輩との審美的感覚を競い合っているのではないだろうか。本誌でも散見されるように、審美修復装置の写真撮影にもこだわり、まさしく歯科技工レベルを芸術作品的に評価しているといっても過言ではない。 さらには、同輩らが認めた不文律(暗黙のルール)にしたがって「審美修復はこうでなければならない」「審美修復はこうあるべき」とした既成概念に囚われ、歯科医師や歯科技工士の一存で決定しているのが現状であろう。それを証するように、本誌のみならず多くの1 だれのための審美補綴、審美技工なのか?図1 日常の補綴臨床においても、CT、光学スキャナー、CAD/CAMといったDigital Dentistry化が進みつつある(本図はイメージ。©chesky/ canstockphoto)。QDT Vol.42/2017 January page 0141

元のページ 

page 8

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です