QDT 2017年2月
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124 本稿では、日本で歯科技工に対する矛盾を解決できぬまま海外に出てしまった私の経歴をふまえ、ドイツの歯科技工士における補綴技工の取り組みかたについて解説し、患者本位の総合補綴治療の目的とその問題点を考察する。●渡独まで 私が単身で渡独してからすでに20年という月日が過ぎようとしている。 26歳のときに日本で歯科技工所を開業した私はまだ駆け出しの歯科技工士であった。そのとき以来、審美を追求していたといえば聞こえがいいが、今となってはまったく違う意味になるとは当時の私には想像もつかなかった。 大学病院勤務時に患者の名前を気に留めることはしていなかった。歯科医師と必要最低限の連絡をし、患者との接点はシェードテイキングの一度のみ、補綴物が入らないと診療室に呼ばれるという状況であった。開業してからも根本的に同じである。技工指示書に記載してある色見本を真似ているはずなのに、口腔内で色が合わない。立ち会いの時など心がとくに痛む。自分でシェードを採りたい。そうすればもっとうまくできたのではないか、製作時間や試適の回数を増やすことでもっと良い修復物ができたかもしれないと後悔を心に抱きながら歯科医師に相談もできずにいた。しかし、自分でシェードを採ることができたとしてもシンはじめに1 「患者の笑顔が見える」ドイツの歯科技工とは?患者本位の補綴治療を目指してこれからの歯科医師と歯科技工士のアプローチを考える連載*1歯科技工士・Organ Dental Technology Hamburg、ドイツ歯科技工マイスターHans-Henny-Jahnn-Weg 41‐45 D‐22085 Hamburg Germany*2歯科医師・補綴臨床総合研究所愛知県名古屋市東区徳川1‐407‐2 Fortress TOKUGAWA大川友成*1 Tomonari Okawa/中村健太郎*2 Kentaroh Nakamura第2回 患者の笑顔が見える歯科技工を目指して―ドイツの歯科技工とは?―本連載の流れ[全3回][第1回(今回)] 問題定義! 患者本位の補綴治療とは? ―これまでの補綴治療、歯科技工を考察する―[第2回(2月号)] 患者の笑顔が見える歯科技工を目指して ―ドイツの歯科技工とは?―(歯科技工士・大川友成〔Organ Dental Technology Hamburg〕)[第3回(3月号)] 患者の機能を見据えた歯科技工を目指して ―咀嚼を回復する歯科技工とは?―(歯科技工士・松前 団〔ラグ・ソウェルデンタルクラフト〕)QDT Vol.42/2017 February page 0326

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