QDT 2017年4月
6/8

61歯科技工士の将来はバイオエンジニア?61 なぜ、このような話をしようと思ったのか。海外からみると日本人歯科技工士には非常に大きなポテンシャルがあるにもかかわらず、そのことに私たち歯科技工士自身が気づいていないという事実があります。それを今一度啓発し、「歯科技工の匠」としての生き方 日本の歯科技工業界は、守られているといえます。それには利点と欠点があります。利点としては、国民が未知なものから守られていることがあげられます。つまり、海外で開発された歯科材料などは、いくら海外で実績があったとしてもすべての製品について綿密な安全試験を行い厚生労働省の認可を受けなければなりません。もちろん、歯科技工士免許制度が敷かれているので、製作される技工物はすべて一定レベル以上に達しているといえます。米国の場合でもFDA(連邦食品医薬品局)の認可は必要ですが、製品によっては複雑な手続きなく販売することが可能です。そして、歯のみならず、「世界産業としての歯科技工」、「歯科技工の工業化」、そして「歯科技工士の再生医療への取り組み」という流れで歯科技工業界のさまざまな可能性と未来を示していきたいと思います。科技工士免許制度がないため、歯科技工という仕事はだれがやっても良いという位置づけです。そのため、著しくレベルの低い歯科技工物も存在します。 日本の技工業界の欠点は利点の裏返しでもあるのですが、世界的な流れから取り残されている面があります。たとえば、バルプラスト樹脂。米国で1950年代に開発されたナイロン樹脂のひとつで、近年日本ではノンクラスプデンチャーの材料として使用されています。日本でこの樹脂の人気が出はじめたのは、米国での登場から50年近く経った2000年ごろからです。当初は歯科医師による個人輸入が中心だったのですが、正▶(左図)登壇する筆者。▶(中図)小口春久氏(日本歯科大学東京短期大学学長)と筆者。▶(右図)学生の質問に答える筆者。はじめに1.米国からみた日本の歯科技工業界著者略歴1996年、筑波大学第二学群生物学類卒業。製薬会社勤務を経て、日本歯科大学附属歯科専門学校(現・日本歯科大学東京短期大学)に入学。卒業と同時に米国・ロサンゼルスにある歯科技工所に勤務。2005年、ロサンゼルスに歯科技工所Bleu Profond Inc.を創業。代表取締役CEO。編集部より:本稿は、2015年6月4日に日本歯科大学 九段ホールにて行われた筆者の講演原稿を編集・再録したものです。QDT Vol.42/2017 April page 0615

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る