QDT 2017年7月
2/8

27チームワーク座談会・診断用ワックスアップからプロビジョナルレストレーションへ(後編)27■プロビジョナルレストレーションで観察できる3つの要素土屋(賢):前回は、診断用ワックスアップの重要性についてお話ししてきました。そこで今回の後編では、その形態を最終補綴物に移行させる前段階となるプロビジョナルレストレーションについて考えていきたいと思います。プロビジョナルレストレーションをおろそかにすると、最終補綴物の質にも大きく影響しますので、その点をしっかりとわきまえて製作することが重要です。 そこでまず、プロビジョナルレストレーションの役割について整理しておきたいと思います。まず第1は、審美的要素です。顔貌との調和が得られているかどうかを、装着期間中に煮詰めていきます。もちろん、それは術者だけでなく患者さんも満足できるものでなければなりません。患者さんと術者の同意のためのツールとしても非常に大切だということです。 また第2には、もちろん機能的な要素が挙げられます。顎位の設定やアンテリアガイダンスの確立が重要ですが、咬合力のかかり方も観察することができます。たとえば、1週間で強い摩耗が生じたり、いつも同じ場所が破損したりするような場合には、そこに強い力がかかっていることがわかります。また、予後に不安のある支台歯の場合には、プロビジョナルレストレーション装着期間中に耐久力をある程度判断することもあります。 そして第3としては、歯周組織との形態的な調和を図ることが挙げられます。支台歯のフィニッシュラインから歯冠部に至るエマージェンス・プロファイルをいかに適切に最終補綴物に付与するのか。そのことを、プロビジョナルレストレーションで評価するということです。昨今では、こうした意味でのプロビジョナルレストレーションの精度が非常に問われています。 ここで症例を紹介させていただきたいと思います(図1~5)。プロビジョナルレストレーションは、現プロビジョナルレストレーションの役割とは?プロビジョナルレストレーションを審美性の確認のために用いた症例図1a~g 前歯部の審美性改善を希望し来院した患者の初診時口腔内写真。₂が欠損しており、その代わりに₃が₂の位置に来ていた。矯正治療は希望されなかった。aebfcgdQDT Vol.42/2017 July page 1047

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る