QDT 2017年9月号
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29フィニッシュラインの仕上げにおける回転切削器具の限界と、超音波(ピエゾ)装置を用いるメリット29 昨今では、CAD/CAMにより加工されるオールセラミック修復物が臨床応用される機会が増加し、金属修復物の時代よりもスムーズなフィニッシュラインが求められるようになってきている。また、歯科医院へのマイクロスコープや高倍率のルーペの普及が加速度的に進み、自ら形成した歯牙のフィニッシュラインを強拡大下で観察する機会が増えたことも、歯科医師の間にさらなる支台歯形成への興味を喚起し、重要性を再認識させているように思える。 筆者は2010年ならびに2014年に「フィニッシュラインをいかにスムーズなラインに仕上げるか」について歯科商業誌に寄稿したが1、2、ここにきて以前とは少し違った特殊な機構をもつ器具が出てきたので、ご紹介させていただきたい(マルチピエゾ、Mectron,東京歯科産業)。この装置は2012年にイタリアで販売されたもので、特殊な機構をもたせることにより従来は前後運動しかできなかった超音波(ピエゾ)チップの動きを楕円運動に変化させることができる画期的な装置である。今回はその特徴をさまざまな角度から検証してみたい。 回転切削器具にはさまざまな問題点があるが、歯科のデジタル化が進む現在にあっても回転切削器具に頼らざるを得ない現実がある。とくに、歯肉縁上の形成においては回転切削器具が必須となる。 こうした中、まず使用するバーの選択はオールセラミックスのための支台歯形成にとって非常に大切な要素である。もし、ここで不適切なバーを選択した場合、 他方、支台歯形成に一般的に使用されている回転切削器具は、その「回転」という動作からフィニッシュラインのエナメルチッピングを避けて通れない宿命にある。拡大してみると、90%に微細な割れ(チッピング)がみられる。上記のような要因によってチッピングの可視化が進んだことにより、この問題点が認識されるようになってきた。そこで、超音波(ピエゾ)振動によってフィニッシュラインをスムーズに仕上げるための装置が必須になってくる。かねてから、この種の装置がフィニッシュラインの仕上げに適していることは知られているが、チップ先端の楕円運動、パワーのコントロール、そしてフィニッシュラインの仕上げに適したチップの開発が進んだことにより以前にも増して格段に術者にとって使いやすい道具になってきたことは間違いないであろう。そこで、この企画ではこれまでの支台歯形成の問題点にはじまり、最新の超音波(ピエゾ)装置を用いて形成したフィニッシュラインの提示、また超音波(ピエゾ)装置を使用する際の注意点などを今一度おさらいし、読者諸氏の臨床の一助とできれば幸いである。印象、技工操作にまで大きな影響を与えてしまうからである。また、バーを装着するタービンならびに5倍速ハンドピースは、何十万回転で回転させたとしてもできるだけブレが生じにくい高精度のものを使用すべきであろう。もし、高回転でブレを生じてしまうと、高周波の振動が発生し、歯髄に致命的なダメージを与えかねないからである。まず、ここで説明するバーの◦はじめに◦1.回転切削器具の選択基準と問題点QDT Vol.42/2017 September page 1381

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