QDT 2017年9月号
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「CAD/CAM時代」とはどんな時代なのか―その解釈と、「教える」ことについてのヒント―79ろう。「精密鋳造法」は精度に、「メタルセラミッククラウン」は審美に変革をもたらした。 しかし、現在進行中の「CAD/CAM化」はそれらとは比べものにならないくらいの大きな変革であろう。ジルコニアという新しい素材を歯科に導入したのがきっかけではあるが、ただ単に新しい素材と新しい機械を導入しただけにとどまらず、働き方・経営・アナログ技工とデジタル技工の壁、そして文化に変革をもたらしている。いわばパラダイムシフトである(図2)。イギリスの産業革命によるパラダイムシフト 18~19世紀にイギリスで起きた産業革命は、働き方をはじめ、社会構造、意識、文化をも変えた革命であった。素人の筆者がここで解説することはいささか気が引けるが、おおまかに言えば「家内制手工業」「工場制手工業」が「工場制機械工業」に移行していったのである。「家内制手工業」とは家族を主体とした生産形態であり、その中心には「職人」がいて、熟練した技術を必要とする(現在のアナログ技工所はこれに相当する)。 「工場制機械工業」とは、資本家が出資して工場を建て、機械を導入し、作業工程は分業や協業にして効率的に生産する方式である。 実際に工場に勤めたのは農民が多数であり、職人がはじめに 本稿では当初、CAD/CAM時代での「教える」ことについて書く予定であった。 現在の歯科技工界にはさまざまな問題があるが、CAD/CAMに関しては、ベテランのアナログ歯科技工士がなかなかCADデザインに手を出さないというのもそのひとつであり、若いCADオペレーターに教える人がいない、あるいはどのように教えればよいのか、といった課題を考えたからである(図1)。 しかしながら、現在は混沌の時代であり、「CADの重要性」を説くよりも、「教え方」についての提案をするよりも、「CAD/CAM時代」とはどんな時代なのかを解釈することのほうが先であると考えるようになった。 以下に筆者なりの解釈を述べるが、読者が「CAD/CAM時代」の経営や教育を考える一助となるなら幸いである。歯科技工の歴史における最大の変革が起こっている 現代の歯科技工技術の中で歴史的に大きな変革といえば「精密鋳造法」と「メタルセラミッククラウン」であ12図1 中規模・大規模のCAD/CAMラボではCADデザインを教える歯科技工士が育っており、新人に対して教えることができるが、小規模ラボではそれができない状況が生じている。この課題はしばらく残りそうである。図2 ジルコニアの登場によってパラダイムシフトが始まったと言っても過言ではないだろう。QDT Vol.42/2017 September page 1431

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