QDT 2017年12月号
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分析 最初のエックス線検査で2における骨のほぼ完全な損失が明らかであった。12の骨損失も歯根の3分の1以上に及んでいた。 担当歯科技工士は、術前状態に仮想投影を重ねて詳細な分析を行い、Virtual Esthetic Project(VEP)の分析基準に従って審美的要件を決定した。 VEPでは、専用ソフトウェアを使用することなく、コンピューター上でシンプルな写真とわずか数本のラインによってスマイルを作り出すことができる1。この工程で明確なガイドラインが与えられることにより、歯科医師と歯科技工士間のコミュニケーションが向上するのである。 本症例では、術前模型と歯科医師から送られた画像データを使用した。VEPに組み込まれている基準線によって達成可能な審美的要件が示される。術前状態の分析では、歯冠形態の正確な評価が大切である。写真のみでは角度によって測定値が不正確になるが、模型を使って作業することで分析はより正確なものとなる(図3~9)。 求められた解剖学的なデータから、審美的観点に立った修復の立案が可能になる。審美的な前方歯群のカーブを決定してみて、歯の再排列が必要であることが判明した:中切歯は切端の位置を下方に位置させな導入 若い女性が21に根露出をともなう上顎前歯部の動揺を理由に来院し、審美回復を望んでいた(図1)。患者の上顎切歯部では、約30%の骨喪失をともなう慢性辺縁性歯周炎が観察され、2においてはほぼ歯根全部に病変が及んでいた(図2)。歯冠の長さ対幅が1対1の中切歯は不均衡でスマイルラインは逆行している。上下顎関係はⅠ級に分類されるものの、切歯を調和のとれた形態で排列するためのスペースはない。この症例に対して、歯周病医、歯科矯正医と担当歯科医師との間で包括的な協議が行われた。 21は保存不可能と判断した。12においては生物学的観点からは保存可能ではあったが、審美的観点から考えて、抜歯とすることとした。最終的には、4本の上顎切歯に代わる2本のインプラントを支台としたブリッジが選択された。 2および2にインプラントを配置するという当初の設計に反して、インプラントは11の位置に埋入された。その理由としては、この領域の歯間乳頭の回復であった。 歯科矯正治療が7ヵ月の期間にわたって行われ、切歯の抜歯後、2の領域には歯槽堤増大術が施され、暫定補綴装置として局部床義歯を製作した。図1 初診時の状態。図2 初診時のエックス線写真。59QDT Vol.42/2017 December page 1893

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