QDT 2017年12月号
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73 昨今、歯科用CAD/CAMシステムや歯科用3Dプリンターに対応するマテリアルが急速に増えてきている。しかし、クラウン・ブリッジの補綴物を製作するマテリアルとしては、生体親和性が高く、かつ審美性がもっとも高い補綴物を製作できるポテンシャルをもつポーセレン前装クラウンが最良であると考えている。しかしポーセレンを前装したからといって、天然歯と同様の咬合・色調・形態を再現するのは並大抵のことではない。 この中から、色調再現性についてさらに掘り下げてみる。天然歯のような色調を再現するためには、明度・彩度・色相が目標歯に近似する必要がある。中でも“明度”は人間の目の性質上もっとも認識しやすく、補綴物の質を向上させるための重要なポイントの1つであり、術者がもっとも注力すべきところでもある。 ポーセレンワークにおいて、築盛ステップ以外の明度を左右する要素としては、支台歯の色調、フレーム材の色調(透過性を含む)、それらを接着するセメントの色調などが挙げられる。特に、オールセラミックレストレーションにて修復する際に、目標シェードより支台歯自体の明度が低い、彩度が高いなどの条件が影響して明度低下を起こす可能性があることは言うまでもないだろう。 しかし、支台歯の色調が目標シェードに影響を及ぼさない症例においても、補綴物の明度低下が起こる可能性は十分にあると考える。 読者の方々は、以下のような経験はないだろうか?・フレーム材の選択において目標シェードより高い明度を確保したにもかかわらず、目標シェードのデンチンポーセレンを築盛して焼成したら明度低下が起きた・フレーム材の選択において目標シェードより高い明度を確保したにもかかわらず、目標シェードより明度が高いデンチンポーセレンを築盛して焼成したら明度低下が起きた 筆者自身も上記のような経験をしている。さらに、VITAシェードガイド16色のうち、比較的明度の高いシェードを再現しようとした時にこういった現象に陥りやすいと感じている。補綴物を製作する際の色調的な指標はどこまでいってもシェードガイドであり、デンチン色=シェードガイドのベース色という発想を抱いてしまうのが一因になっているのではないだろうか。 今回は先述したような明度低下がなぜ起こるのかを疑問に感じた筆者が、その原因を考察するため、臨床に使用しているinitial Zr-FSのポーセレンパウダーの透過性を計測した。本稿ではその計側結果と筆者なりの分析を報告したい。はじめにQDT Vol.42/2017 December page 1907

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