QDT 2017年12月号
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97第2回 部分床義歯設計の概念① ―総義歯の設計順序とレストの基本―97いては後述する)。 筆者が経験した部分床義歯の長期症例の中に、経過観察をしていなかったにもかかわらず十数年にわたって機能したケースがある。あるきっかけで久しぶりに来院したその患者の下顎部分床義歯はクラスプがすべて折れていたが、鉤歯は1本も失われていなかった。そしてその局部床義歯は手で外そうとすると当然のことながらパカパカと外れてしまうのだが、食事などを摂る際に何も苦なく使えていると患者は言っている。 そのときに、気づいたことがあった。それは、ある方向には局部床義歯を外そうとした時に抵抗しているということである。これが維持の補助をしているのではないかと気づいたのがその時であった。そしてそれはまさに、「クラスプ・維持装置が歯を抜く」ということの裏返しであるように感じた。臨床上で「このクラスプの維持装置がなければ鉤歯は守れたのではないか?」と感じるケースはたいへん多い。 なお、その症例の下顎部分床義歯は顎堤上で大きく動き回り、筆者は新製を勧めたが、患者は「食べるのに苦労していない」と拒否され、内面の適合の回復のみを行った経験がある。 当時の筆者は、このような状態を予期してこの部分床義歯を製作したわけではない。しかしそれに気づいたのちに、大きな仮説を立てた後に「こうすればうまくいくのではないか?」と考えることを実践していった結果、良好な結果を得られるようになった。まさに患者さんと、現場の治療が先生である。そしてそれらが現在の部分床義歯治療テクニックの根拠に至っている。部分床義歯の設計順序は?図1 支持→把持→維持の順番を示す。局部床義歯の設計においてはこの順番が重要である。支持維持把持この順番にて設計することが大切であるQDT Vol.42/2017 December page 1931

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