QDT 2018年2月号
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た(図1)。非対称的な歯頚部のせいで、歯肉は不規則で不調和なものとなっていた。患者の希望は、口蓋部を覆わず、年齢に適した審美性をもつ、可能な限り生体適合性のある修復物で、金属部は見せないこと。患者はインプラントを拒否。最終的な臨床診断およびエックス線写真診断後、7、5、3、1、1〜3は保存可能と判断された。下顎は全歯残存、臨床的にもエックス線写真上でも治療の必要はなかった。治療計画 患者がインプラントを選択せず、左側は遊離端状態であるため、計画可能なのは可撤式補綴装置のみとなった。保存可能な上顎歯はすべて、支台歯としてテレスコープワークに含める必要がある。患者の要望である生体適合性と金属部露出回避の条件を満たすために、テレスコープ内冠には白色PEEK(BioHPP,Bredent,ドイツ)を用いることとした。二次クラウンは、生体適合性のある純金(Galvanogold、Cecom-Evis,ドイツ)によるガルバノクラウンとする。三次フレームは、エステティックゾーンに審美修復用コンポジットレジンVita VM LC ow、側方歯部には人工レジン歯Vita Physiodens Posteriores(ともにVita Zahnfabrik,ドイツ)を使用することとなった。臨床工程 不適切なブリッジ構造を慎重に切り離し取り外す前に、シリコーンパテで元の修復形状の型を印象採得すはじめに メタルフレームにコンポジット材料の築盛を行うことは、時に非常に時間がかかる作業となるが、患者の美的要求を満たすためには重要な工程である。初めにフレーム調整を行い、オペーク処理をし、デンチン層を築盛、最後にエナメル部分を個性に合わせて層状に築盛する。今日の高流動性光重合型コンポジットレジン材料は、セラミック築盛に類似した審美的なコンポジットレジン築盛を可能にしている1。現代の築盛システムは色も安定し、摩耗にも強い3。プラークとの親和性や水分吸収量が大幅に減少し、術後の長期安定が可能となった。マスキングレベルが高いため、少ないスペースでレイヤーが薄くなっても、自然で優雅な歯の形状を製作できる。本稿では、エステティックゾーンにおける、5本のテレスコープクラウンを使用した可撤式補綴装置を、効率的かつ審美的に製作する方法を紹介する。症例初診時の状況 72歳女性。上顎に、臨床的に不適切で見栄えも悪いアタッチメントデンチャーが装着されていた。特に、アタッチメントを有する3〜3まで一体化されたクラウンブロックは、暗く生命感のない外観で、1部の歯肉後退によるクラウンの金属辺縁の露出が目を引い図1 初診時の状態。上顎のアタッチメントワークが臨床的に不適切であるとわかる。55QDT Vol.43/2018 February page 0233

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