ザ・クインテッセンス10月
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86新潟県開業・関崎歯科医院連絡先:〒954‐0111 新潟県見附市今町5‐17‐18 関崎和夫今まで行われてきた治療法について,長期経過症例・文献をもとに,その適応と効果を「検証」し,さらに今後の展望を考察する.The Maxillary ExpansionKazuo Sekizaki検証の時代はじまるTHE VERIFICATIONはじめに う蝕予防や歯周病予防として8020運動が多くの人々に浸透し,「削らない,歯を抜かない」治療を求める患者が増えてきている.それにともない矯正治療においても,非抜歯治療を求める患者や,そのニーズに合わせるかのように,非抜歯治療をアピールする矯正治療が増加してきている.叢生治療において,抜歯・非抜歯の選択が治療法の最大の分岐点となるが,抜歯を避けるためには,各種マルチブラケットシステムに加え,ヘッドギア,リップバンパー,歯列弓拡大装置,新しくはインプラントアンカレッジなど,いろいろな治療方法の選択が必要である症例が多い.たとえマルチブラケットシステムに,いろいろな装置を複合して治療したとしても,すべての叢生症例において非抜歯で行うことは不可能である.しかし,治療法の選択肢をもたない歯科医師が,無理に床矯正装置などの単一な方法で対処し,すべて拡大・非抜歯治療だけで治療可能というように述べている書籍・文献も散見され,筆者は大変憂慮している1. 非抜歯治療を行うにあたって歯列弓拡大は有効な治療法の1つであるが,歯列弓拡大に関してはリラップス(後戻り)が多く,その他,多くの問題点を含んでいる.そこで筆者は,本誌2003年9~11月号に「咬合誘導を考える.叢生治療の現在:下顎歯列弓拡大について」2を発表し,一般的に否定的な見解の多い下顎の拡大について賛否両論を,過去の文献的考察から最近の拡大・非抜歯治療の動向を含め,筆者の症例を提示し述べた. その後,本誌2009年3~6月号に「咬合誘導──下顎歯列弓拡大を検証する」3においては,2003年に発表した症例のその後の経過および多くの下顎拡大症例を提示し,下顎歯列弓拡大後の後戻りについて検証を行った. 歯列弓拡大においては,上下顎をともに拡大しなければならないことが多いため(図1~5),下顎歯列弓拡大だけでは不十分である.そのため今回は,下顎歯列弓拡大の続編として上顎歯列弓拡大について,過去の文献的考察から最近の拡大・非抜歯治療の動向を含め,筆者の症例などを紹介したうえで検討してみたいと思う.上顎歯列弓拡大を考える─第1報─上顎歯列弓拡大の歴史the Quintessence. Vol.29 No.10/2010̶ 2260 第6回日本国際歯科大会演者10月10日(日)Gホール午前

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