ザ・クインテッセンス10月
7/8

120 欠損治療において,インプラントをはじめとするさまざまな治療が標準化され,治療の選択肢が増えてきたことと同時に患者のニーズも多様化してきている.欠損形態,残存歯数,咬合状態,それを取り巻く口腔内環境,患者の価値観も含めた社会的背景や経済状況,さらには治療時期のタイミングなど1つたりとも同じ条件はない.ブリッジやパーシャルデンチャーといった従来の治療法は,適応症さえ守れば予知性のある治療法として確立しており,その長期的な経過報告も十分である1,2.しかし,毎日の一般臨床においては適応症の患者ばかりが来院するわけでなく,ブリッジやパーシャルデンチャーだけですべての治療計画はまかなえない.いわゆる難症例においては従来の治療法のみの対応ではいささか無理が生じてくる. オッセオインテグレーションの概念が確立し,さらにその適応症の拡大が報告されている現在,インプラント治療が欠損補綴の治療法としての第一選択としてあげられるようになってきている.インプラント治療によって多くの患者に福音がもたらされている一方で,保存できる歯の処置を怠り,“戦略的”あるいは“予知性”などと称しインプラントに置換している治療も見うけられ,そのような画一的な治療計画をみると残念に思うことがある. 歯の移植の歴史は古く,臨床的にはさまざまな試みがなされてきた.1970年代以降,スカンジナビアでの歯の移植と再植に関しての研究3,4により,歯根膜をはじめとした歯周組織の創傷治癒のメカニズムが明らかになった.そのなかでも,Andreasen5は歯の移植や再植において基礎的な研究と長期的な臨床経過を示した.また日本においては,押見6,7,下地8,9らが1980年代後半より根完成歯を欠損歯列に応用し,良好な長期経過症例を提示してきた.また月星10は,Andreasenの一連の研究成果をもとに,総合治療医への提言1.はじめに──治療計画を立てるときに歯の移植を忘れてはいませんか?インプラント時代に「歯の移植」を考えるソケットリフトを用いた上顎臼歯部への歯の移植法塚原宏泰東京都開業 塚原デンタルクリニック連絡先:〒101‐0052 東京都千代田区神田小川町1‐8 小川町クレストビル3FHiroyasu TsukaharaAutotransplantation of Teeth Using Osteotome Sinus Floor Elevationthe Quintessence. Vol.29 No.10/2010̶ 2294 第6回日本国際歯科大会演者10月10日(日)Eホール午後

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です