ザ・クインテッセンス10月
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172はじめに 1990年代に,歯内療法は多くの点で技術革新を遂げた.象牙質歯髄複合体の概念や歯科用実体顕微鏡,新世代の電気的根管長測定器,Ni‐Tiファイル,デジタルエックス線写真,加熱ガッタパーチャ法(いわゆる垂直加圧充填)支援装置,歯科用CT画像などの出現によるものである.歯内療法の革新は,治療成績の向上と治療の効率化をもたらしたが,基本的な手技の大切さを再認識する結果ともなった.東京都開業 吉岡デンタルオフィス連絡先:〒101‐0062 東京都千代田区神田駿河台2‐3‐13 鈴木ビル1F*東京都開業 井澤歯科医院連絡先:〒151‐0061 東京都渋谷区初台2‐20‐1安全で手際のよい再根管治療歯への対処のポイント2根管口明示のポイント吉岡隆知/井澤常泰*根管がみつからない・みつかりにくい理由 最近は安易な抜髄をしない傾向にある.ところが,歯髄は経時的に変化するもので,たとえば歯質欠損が大きいと,修復処置後でも歯髄腔は狭搾していく.歯髄腔の狭搾は,歯髄血管の空疎化および歯髄血流の減少に繋がり,狭搾した歯髄は健康な歯髄よりも外来からの侵襲に対して弱い.う蝕がなくとも歯髄腔の狭搾は経時的に進行するため,高齢者の歯では同様のことが起こりうる.歯髄腔が狭搾した根管治療の困難な症例は,今後も増加するであろう❶. このような理由により髄腔開拡を行っても根管が見つからない,という症例にたびたび遭遇する.根管が見つからない・見つかりにくい理由として,次ページのように4つ考えられる.根管が狭搾した68歳女性の6(*印).口蓋根管は穿通したが,頬側根管はいずれも石灰化していた.the Quintessence. Vol.29 No.10/2010̶ 2346 臨床で遭遇する頻度が高いのに実は難しい処置をとりあげて,若手歯科医師向けにやさしく解説.臨床ヒント新・明日から変われる毎日使える第6回日本国際歯科大会演者10月9日(土)Cホール午前❶*

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