ザ・クインテッセンス3月
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6the Quintessence. Vol.30 No.3/2011̶0486 今回は歯科医師の立場から「少子高齢化」を考えるとともに,国民の立場からみた「歯科医療への期待」について考えてみたい.とくに,急速な少子高齢化とう蝕有病者の減少・有歯顎高齢者の増加,国民の口腔内の悩みからみえてくる,あるべき歯科医療を探ってみたい.キーワードは健康少子高齢社会のいま,歯科医師が知っておきたいこと「治療~予防~健康」の流れなかでトレンドである「健康」に関するトピックを,各種報告書や研究資料とともにわかりやすく隔月リレー連載で紹介.少子高齢化にともなう歯科疾患の量的変化 平成22年の高齢化率(65歳以上の人口が占める割合)は23%を超えた.この高齢化率自体も問題だが,それ以上に問題なのが高齢化のスピードである.日本は諸外国とは比較にならないほどのスピードで高齢化が進んでいる.高齢化のスピードを,高齢化率が7%から14%に達するまでの所要年数で比較すると,フランスが115年,スウェーデンが85年,イギリスが47年,ドイツが40年なのに対し,日本は24年である.すなわち,ほかの国々はゆっくりと進む高齢化に対して,その準備に十分時間をかけることができた.しかし,日本は準備にかける時間がほとんどなく,ほかに参考になる国がない.すなわち,先進国に追いつけ追い越せの時代から,すでに世界の手本になる時代に入ったのである. 過去50年と今後50年(推計)の人口構造の変化を図1に示した.1955年と2055年の総人口は同程度だが,その構成割合が激変,つまり若年者は激減し,高齢者は激増する.とくに,う蝕による受診率の高い5~14歳では,約1/4に人口が激減する.また50歳以上では人口がかなり増加する.1955年には80歳以上の高齢者は少なかったが,2055年にはその3千倍以上になると推計されている.日本の少子高齢化とはこれほどに劇的な人口構造の変化なのである.図1 各年齢群別人口の推移.統計局「人口推計」および国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」より作成.図2 中学校におけるむし歯の被患率等の推移.日本に訪れた急速な少子高齢化 毎年行われている学校保健統計調査の結果(図2)から,12歳のむし歯等数(喪失歯および処置歯数を含む)や中学校におけるむし歯の者の割合は毎年減少してきていることがわかる.すでに述べた少子化を考えれば,若年者のう蝕総数は激減することは明らかである.2少子高齢化と歯科医師──人口構造の変化と歯科医療への期待恒石美登里日本歯科総合研究機構連絡先:〒102‐0073 東京都千代田区九段北4‐1‐20キーワード:少子高齢化,歯科疾患,歯科医療への期待(千人)12,00019552005205510,0008,0006,0004,0002,000100歳以上095~9990~9485~8980~8475~7970~7465~6960~6455~5950~5445~4940~4435~3930~3425~2920~2415~1910~145~90~4中学校におけるむし歯 (う歯)の者の割合(%)12歳における永久歯の むし歯等数(本)10092.244.752.9280.0712歳における永久歯のむし歯等数中学校におけるむし歯(う歯)の者の割合52.881.405432109080706050403020100昭和591121(年度)平成元

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