ザ・クインテッセンス3月
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144the Quintessence. Vol.30 No.3/2011̶0624 周知のとおり,要介護高齢者には摂食・嚥下障害が多く1~3,食物や唾液などの誤嚥を原因として高齢者の主たる死因である誤嚥性肺炎が引き起こされる.摂食・嚥下リハビリテーションと聞くと“訓練をしなければならない”とのイメージがあるかもしれないが,それ以前に押さえておかなければならないことがある. われわれ歯科医師がそういった症例に遭遇するのは,在宅や施設への訪問診療の場面が多いと考えられるため,われわれが過去に行った調査結果から紹介したい.265名の在宅もしくは施設に入居している摂食・嚥下障害患者に対して嚥下内視鏡検査を行い,栄養摂取方法を1.経管栄養のみ,2.経管>経口,3.経管<経口,4.経口調整要(ミキサー,粥など常食でないもの),5.経口調整不要(常食)の5段階に分類して,初診時の栄養摂取方法と,検査の結果勧められる栄養摂取方法を比較した(図1)4.1.摂食・嚥下障害へのかかわり方その結果,図1左に示すように摂食・嚥下機能が実際よりも低く見積もられていた症例,つまり食形態を上げられるはずの症例は37名であった.さらに37例中30例は,初診時は経管栄養のみであったにもかかわらず,ゼリーやトロミ等,誤嚥しにくいものを用いれば,訓練レベルでの経口摂取が可能であると判断された症例であった.一方,図1右に示すように摂食・嚥下機能が実際よりも高く見積もられていた症例,つまり食形態を下げたほうがよい症例は40名存在した.40例中28例は,初診時常食を摂取していたが,水分にはとろみをつける,軟菜食にするなど,食形態に何らかの調整を必要とする症例であった.数は少ないものの,常食を摂取しているにもかかわらず摂食・嚥下機能が著しく低下しているために,経管栄養を選択すべきであると判断された症例も存在した. この結果から,患者の摂食・嚥下機能と栄養摂取140,000年総務省「成年勢査年降立社会保障究「本将来推120,000100,00080,00060,00040,00020,00020008,9995,9017,1067,73678,48418,472200520102015202020252030(年)0総人口(千人)75歳以上70~74歳65~69歳60~64歳15~59歳0~14歳126,926127,708127,473126,266124,107121,136117,58020,9726,5527,2468,16261,41413,23320,2607,5016,9657,53764,78914,08517,6668,8967,9967,25767,19615,09515,7357,5419,4968,34768,95116,19713,7926,8578,0859,92071,74517,07411,4226,5907,3798,47376,11617,727高齢社会で歯科医師がもつべき知識とすべきこと第2回:実践編摂食・嚥下障害の理解と訪問診療の実際戸原 玄日本大学歯学部摂食機能療法学講座連絡先:〒101‐8310 東京都千代田区神田駿河台1‐8‐13Haruka ToharaUnderstanding Swallowing Disorder and the Practical Side of Visiting Treatmentキーワード:摂食・嚥下障害,訪問診療,評価,訓練

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