ザ・クインテッセンス12月
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77AUTOTRANSPLANTATION+ORTHODONTICS東京都開業 塚原デンタルクリニック連絡先:〒101‐0052 東京都千代田区神田小川町1‐8 小川町クレストビル3F*埼玉県開業 三井病院歯科矯正科連絡先:〒350‐0066 埼玉県川越市連雀町19‐3塚原宏泰/川端喜美子*Orthodontic Treatment Efficiently Using Autotransplantation of TeethHiroyasu Tsukahara, Kimiko Kawabata*キーワード:インプラント,歯牙移植,矯正治療,連携,移植矯正インプラント時代に「歯の移植」を考える歯の移植と矯正治療:一般臨床医と矯正医との連携はじめに1)歯の移植について 押見1,下地2らは,1980年代より根完成歯を欠損歯列に応用し,良好な長期経過症例を提示してきた.本邦において,歯の移植は,歯根膜をはじめとした歯周組織の創傷治癒など,生物学的背景を理解し,その理論に基づく術式を応用することで予知性の高い治療法として確立している1~5.移植歯の生存率は報告者によって多少のばらつきがあるが,80~90%とされ,根未完成歯の移植や抜歯窩への即時移植ではより良好である.経過不良で抜歯に至った原因は,アンキローシスなどの置換性吸収と歯周組織の付着喪失であるが,置換性吸収はその進行が緩慢な場合もあり,筆者らは一概に経過不良とは考えていない(表1)6. 歯の移植を臨床に応用する場合,さまざまな適応が挙げられる(表2)6が,本論文は矯正治療との併用について述べていきたい.2)矯正治療における歯の移植の応用について 矯正治療は,歯の移動という骨と歯根膜の特性によりダイナミックな変化が期待できる.矯正治療と歯の移植の併用はお互いにとって有利に働くことが多い7,8.具体的には,① 歯の移植は歯根膜の特性を活かせるため,移植後に本来の歯同様に移動させることが可能である.② ドナー歯と移植床を適合させることが外科術式的に困難な症例では,植立後によい位置関係が得られないことがある.その場合,移植できる位置にとりあえず移植し,術後に移植歯の移動を行うことで位置の不備を十分に解消できる.③ 術後に矯正力をかけた移植歯は,歯根膜の活性化が得られるため,アンキローシスを起こしづらい8. また,歯の移植には年齢的な制限はなく,インプラント治療が禁忌とされている若年層からインプラント治療に適していない骨質の悪い高齢層まで可能である. 一方,矯正治療とインプラント治療の併用は欠損を補う意味合いと同時に,強力な固定源として利用することが多い.インプラントの移動は不可能であthe Quintessence. Vol.30 No.12/2011̶2699

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