ザ・クインテッセンス12月
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93的観点からは,歯列は顎口腔機能を司る上下顎歯の咬合と調和するよう治療が遂行されねばならない. 本稿の目的は,広範囲の補綴治療を行うに際し,審美性と機能性を兼ね備えた治療結果を実現するには,診断と治療計画の段階において咬合平面をどのように再構築するべきかを考察し,さらに筆者らが活用している臨床的術式を紹介することにある.1.審美性と機能性の調和とは1)審美性を獲得するための3つの条件 審美性の改善に際しては,1歯単位の審美性が重要な症例もあれば,顔貌と歯列の三次元的位置関係から得られる審美性が重要な症例もある.一般に,良好な審美性を獲得するためには,次の3つの条件が関連してくる.条件1:歯と歯列との調和条件2:歯列の外観と口唇の形態との調和条件3:歯列と顔貌との調和 良好な審美性とはこれら3つの条件が整っている状態を指す.そして審美改善を目的とする補綴や修復では,このことが機能性とも調和していることがはじめに 現代の補綴治療においては,審美性の改善が大切な治療目標の1つとして求められる.最近の審美修復分野におけるセラミック材料と補綴物製作技術の進歩は著しく,より審美的に優れた補綴物を製作することが可能になりつつある.そうした歯単位の審美性は大切であるが,修復によって良好な審美性を回復するための条件として顔貌,口元,歯列との調和も挙げられる.すなわち,会話をはじめとする日常生活での顔貌の審美性を考えるとき,口元と歯の排列(歯列)はその優劣に大きな影響を与える要素の1つと見なされる.Goldstein1も指摘しているように,審美性の改善を目的とした治療では,ある特定の部分だけの治療を行ったとしても,真の審美性回復のための問題解決にはならないわけである. 実際に,広範囲の補綴による修復が不可欠な症例において,歯列と口元,あるいは顔貌との調和が乱されている状況に遭遇することが多い.したがって,その治療に際しては,審美的観点からみた歯列と口唇の形態との調和,さらに顔貌との調和も綿密に診断し,治療計画がなされねばならない.また,機能東京都開業 東京ステーション歯科クリニック連絡先:〒104‐0028 東京都中央区八重洲2‐4‐1 常和八重洲ビルB1F*1デンタルヘルスアソシエート代表,東京都開業*2アッヴェニーレ代表*3ハイテックデント所長小川洋一/岩田健男*1/辰己 進*2/田村勝美*3Integrating Esthetics and Function :A Useful Clinical Procedure to Establish Occlusal Plane during Extensive RehabilitationYouichi Ogawa, Takeo Iwata, Susumu Tatsumi, Katsumi Tamuraキーワード:審美,咬合,フェイスボウトランスファー,EOアナライザー審美と咬合の調和─広範囲の補綴治療における咬合平面の臨床的決定法─INTEGRATING ESTHETICS AND FUNCTIONthe Quintessence. Vol.30 No.12/2011̶2715

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