ザ・クインテッセンス12月
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119はじめに 歯の移植の歴史は長いといわれている.古くは他家移植が主流であったため,血液を介する感染症の問題から移植処置は次第に衰退した.その後かわって自家移植,とくに萠出前の智歯の移植が注目され,現在に至っている. これまで,歯根完成または未完成の多くの智歯の移植が報告されているが,それだけでは適応症例が限られるので他の候補を検討してみた. たとえば,頬舌方向に転位して咬合から大きく逸脱して根近接をともなう歯や,歯周病が根分岐部に波及して根分割抜歯を要すると診断された歯などが,移植の候補になりうると考えられる. そのほかに,抜歯以外に方法のない歯根や,重度の歯周疾患の歯をいったん抜歯後,改めて移植する症例のほか,歯の欠損後,期日の経過した部位に窩洞を掘って移植する方法も考えられる. 今回は筆者が経験した比較的長期間経過した移植症例を提示したい.1.自家歯牙移植の重要ポイントのコンセンサス1)移植歯歯根膜と歯周組織の結合を妨げないためには? 移植歯と移植部歯周組織については,Andresenらによると,移植歯肉線維との結合および歯根膜への再血管化は1~2週間で完了し,歯根膜線維の結合は1~2週間で開始,3~4週間で完了するといわれている.したがって,歯肉の再結合がなんらかの原因によって妨げられると,歯根膜の再血管化は困難になり,歯根膜の感染壊死が生じ,歯根膜の再結合が起こらなくなる.①移植歯の安静 そこで,自家歯牙移植処置を行う場合,移植歯の移植部位での安静が重要であると考えている.このために必要なことは,一時的に隣在歯と固定する,そして移植歯咬合面を削除して対合歯との咬合接触をなくす,などがあげられる.LONG-TERM CASES神田歯科医院連絡先:〒675‐0101 兵庫県加古川市平岡町新在家1‐256‐17Long-Term Case Report of Autotransplantation of TeethToshifumi Kanda神田寿文自家歯牙移植症例の長期経過観察埋入深さ,根管処置のタイミングは予後にどう影響するか?キーワード:自家歯牙移植,埋入深さ,根管処置長期症例に学ぶその治療は果たして適正であったか?the Quintessence. Vol.30 No.12/2011̶2741

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