ザ・クインテッセンス12月
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15012歯周抗菌療法の効果と課題(最終回)はじめに 基礎的データが圧倒的に不足している歯周抗菌療法であるが,実際に抗菌薬を使えばどれくらいの効果があるのだろうか? 文献を元に検証してみよう.各抗菌薬はどれくらい効くのか? 不思議なことだが,歯周抗菌療法は基礎的データよりも,臨床的データのほうが豊富である.各種抗菌薬をSRP単独の場合とSRP+抗菌薬のパターンで比較した論文はたくさん存在する.多くの論文はプロービング値の減少量や付着の獲得量などを指標に効果を判定しており,その結果にはばらつきがある.くわしくはレビュー論文1などを熟読されることをお勧めする. 統計学的に有意差があるかどうかを判定基準(プロービング値の改善や付着の獲得量)とした場合,アモキシシリンとメトロニダゾールの併用では7つの報告のうち5つでSRP+抗菌薬の併用療法に効果を認めている.メトロニダゾールでは14研究のうち5研究で有効との結果である.あとはドキシサイクリン,テトラサイクリン,アモキシシリン,アモキシシリン+クラブラン酸,クリンダマイシン,どれもがSRP単独と比べて有意差がなかった(表1).有意差といってもプロービング値,付着レベルともに1mmちょっとくらいなので,これが臨床的にどれだけ有意なのかは判断の迷うところであろう.しかもその程度の差すら認められない報告が圧倒的に多いとなるとなおさらだ. 基礎的なバックグラウンドを固めないで行うこれらの研究は“やってみたら効いた”とか,“やってみたけど効かなかった”というレベルに見えてしま歯周抗菌療法の効果と課題(最終回)山本浩正大阪府開業 山本歯科連絡先:〒561‐0861 大阪府豊中市東泉丘4‐2‐10‐102Effect and Question of Periodontal Antibiotic Therapy Hiromasa Yamamoto12Periodontal Antibiotic TherapyEBMの蓄積された現代の歯周内科的抗菌療法連載にあたって連載にあたって 西洋医学に与して歯科医療を進めるのであれば,サイエンスの部分に関して歯科は医科に包含されていると考えるべきである.残念なことに相互のコミュニケーションが不足しているため,医科は歯科を放任しているし,歯科は医科を横目に見ながら自分勝手に事を進める傾向がある.歯周内科的抗菌療法がどれだけ内科的あるいは感染症医的なのかはわれわれには見えにくい.医科における歯科が“井の中の蛙”とならないよう,医科における感染症治療という視点で歯周抗菌療法を鳥瞰してみたい.本連載が井の中から抜け出す一助になることを祈っている.キーワード:歯周抗菌療法,アジスロマイシン,LDDSthe Quintessence. Vol.30 No.12/2011̶2772

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